大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>111.PCの価格下落はいつまで続くか

2008/09/01 16:51

週刊BCN 2008年09月01日vol.1249掲載

 身近な商品の価格高騰が顕著だ。総務省が先頃発表した今年6月の全国消費物価指数によると、主要品目における前年同月比指数で、灯油の42.2%、ガソリンの24.2%の値上がりを皮切りに、スパゲッティの33.2%、チーズの27.3%、チョコレートの22.8%、即席めんの21.4%など、生活に密着した石油製品や、食品などの高水準での値上げが目立つ。

■パネルとメモリの価格下落で

 一方、値上げブームに逆行して価格が下落しているのが、パソコンや薄型テレビである。BCNランキングによると、今年6月の平均実売価格は、ノートPCは前年同月比で13.3%減の11万5000円、デスクトップPCは同14.6%減の12万1000円、PC全体では13.8%減の11万7000円と、2ケタ台の大幅な価格下落となっている。

 薄型テレビも同様だ。液晶テレビでは、売れ筋となる42インチが前年同月比20.9%下落の21万円になったほか、液晶テレビ全体では7.5%の下落となる12万1000円。プラズマテレビも、37インチが30.7%下落の12万6000円となったのをはじめ、プラズマテレビ全体で、22.5%減の18万9000円となった。

 なぜ、ここまでパソコンや薄型テレビの価格が下がるのか。

 パソコン、薄型テレビに共通した大きな要素は、パネル価格の下落である。

 ノートPCの場合には、液晶パネルの汎用化が進展し、わずか半年で2割程度の価格下落となっている。また、液晶テレビについても、価格下落のほとんどを、コスト構成比の4-5割を占めるパネルが下落したものによる影響と見られている。

 薄型テレビ向けパネルでは、海外のパネルメーカーが、オリンピック需要期を狙った戦略的な価格で流通させるなど、企業間の競争が激しいことも、パネル調達価格の下落に直結している。

 さらに、ここにきて値上がり傾向にあるといわれるメモリも、調達価格は、1年前に比べると、やはり3割程度の価格下落状態を維持している。加えて、パソコンメーカーは、CPUなどの主要部品のほとんどをドル建て調達しており、これも円高の影響によるコストダウンにはプラス要素となっている。

 また、薄型テレビ用パネルでは新世代の生産設備の稼働や、生産ラインにおける歩留まり率向上もコストダウンにつながっている。これらが末端価格を引き下げる。

■値上がり要因が目白押し

 だが、価格下落はこれ以上続かないだろう。原材料費の値上がりを背景にした各種部品の価格上昇が見られているほか、メモリも価格上昇傾向がみえてきている。さらには、原油高を背景にした輸送コストの上昇も、パソコンのコスト上昇に跳ね返ることになる。

 加えて、台湾の主要ODMベンダーの間では、工場を配置している中国におけるコスト上昇を背景に、生産単価の引き上げ交渉を開始したという動きも出ている。

 原材料費の上昇はもとより、中国における労働賃金の上昇、人民元の対ドルレート上昇なども、中国生産しているパソコンのコスト上昇の要素として見逃せない。

 現在は価格が下落傾向にある製品も、いつ上昇傾向に転じるかは予断を許さない状況なのだ。
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