大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>120.Windowsの新ブランディング戦略の狙い

2008/11/03 16:51

週刊BCN 2008年11月03日vol.1258掲載

 マイクロソフトが、Windowsのブランディング戦略を大きく変更する。

三つのブランドを統括

 Windowsには、PC向けのOSであるWindows Vistaのほかに、携帯電話やスマートフォンなどに搭載されているモバイル機器向けOSのWindows Mobile、クラウドの世界でさまざまなサービスを提供するWindows Liveという、三つのブランドがある。だが、それぞれの製品、サービスは、個別にマーケティングが行われ、それぞれの観点から訴求していた。

 今回のブランディング戦略の変更では、「Vista」「Mobile」「Live」という三つのブランドを統括する形で、「Windows」というブランドを置き、それらを包括したマーケティングが開始されることになる。

 マイクロソフトコンシューマ&オンラインマーケティング統括本部コンシューマWindows本部・藤本恭史本部長は、「これまで、Windowsといえば、PCからの切り口でのマーケティングに終始していた反省がある。それを見直し、それぞれのプロダクト、サービスがお互いに連携することで、マイクロソフトならではの新たな価値を提供するのが狙い」と、その意図を語る。

 組織体制も、コンシューマ&オンラインマーケティング統括本部の下に、Vistaを担当するコンシューマWindows本部、Mobileを担当するモバイルコミュニケーション本部、Liveを担当するオンラインマーケティング本部を配し、横の連携を取りやすい形とする。

壁のない世界へ

 訴求の具体的な切り口としては、「忙しいときほど、楽しみたい」「大切な思い出ほど、見せたくなる」「身近なシーンほど、ドラマにできる」「知らないことでも、守ってほしい」「遠くにいるほど、つながりたい」「メールは、一つにまとめたい」という六つの利用シナリオを用意。とくに、今年の年末商戦では、前半三つの切り口からの訴求を行う。

 デジカメや携帯電話で撮影した写真や、ビデオカメラで撮影した映像を、Vista搭載PCを活用して編集したり、マイクロソフトが新たに提供する「フォトシェアリングサービス」を利用して、画像をアップロードし、多くの人で共有するといった提案だ。

 「それぞれのプロダクトを担当する三つの組織が、それぞれの知恵を生かしながら、シナリオカットからの提案が可能になる。製品中心の提案からも脱皮できる」(藤本本部長)としている。

 さらに、全世界10億人という圧倒的なブランド力を持つPCユーザーへの影響力を、今後、認知度向上が課題となるWindows MobileやWindows Liveの領域に持ち込むことで、即効的にブランド価値を高める狙いもあるだろう。

 出遅れているクラウドの領域でも、単にヤフーやグーグルとの違いを訴求するのではなく、PC、モバイル、クラウドの組み合わせにより、Windowsならば何ができるのかを訴求していくことになる。

 新たなブランドメッセージは、「Windows Life Without Walls」。日本語では、「壁のない世界へ。」というメッセージになる。Windowsの新たなブランディング戦略は、文字通り、壁を取り払えるかどうかが鍵になる。
  • 1