大河原克行のニュースの原点

<大河原克行のニュースの原点>128.デジカメに宣戦布告するシャープのケータイ

2009/01/05 16:51

週刊BCN 2009年01月05日vol.1266掲載

 「ライバルはコンパクトデジタルカメラ」──。

 国内携帯電話市場においてトップシェアを持つシャープが、同事業に関してデジカメへの対抗心を露わにした。同社が掲げるキーワードは「デジカメケータイ元年」。携帯電話をカメラの観点から進化させるメッセージだ。

 とはいえ、いまや携帯電話にカメラ機能が搭載されているのは当然のこと。実際、国内販売されている携帯電話の9割以上にカメラ機能が搭載されている。また、ケータイ白書2008によると、「購入する際に重視した機能はなにか」との設問に対して、「カメラ」とした回答者が最も多くなっている。

 それにもかかわらず、なぜシャープは「元年」という言葉を使ってまで、カメラ機能を訴求するのだろうか? 実はシャープの狙いは、「カメラケータイ」ではなく「デジカメケータイ」としているところにある。

「デジカメケータイ」とは?

 シャープが打ち出しているのは、これまでのカメラ機能にとどまらず、コンパクトデジカメと対抗できる機能を携帯電話に搭載したという意味なのだ。それが冒頭の言葉につながる。

 シャープの通信システム事業本部長・長谷川祥典執行役員は、「携帯電話のカメラ機能について、多くの人が、暗いところではまともに写らない、色味が悪い、動きのあるものは形が歪むなど、画質に満足していないことがわかった。そのため、携帯電話にカメラ機能がついていながらも、多くの人はデジカメを一緒に持ち歩いているのが現状」と語る。

 シャープは秋冬の上位モデルに、これまでの主流だったCMOSに代わり、CCD方式の8.0メガピクセルカメラを搭載。高解像度の実現とともに、CMOSが苦手とする暗所での撮影課題を解決した。「CCDは自社開発によるもの。デジカメケータイは、デバイスと商品の垂直統合によって実現した、シャープのオンリーワン技術」と長谷川事業本部長は胸を張る。

 今後、同社では携帯電話のカメラを順次CCDへと置き換えていく考えだという。さらに、新開発の画像処理エンジン「ProPix」の採用による高い色再現性、ダイナミックレンジの拡大、ノイズ除去といった面での強化のほか、オートフォーカス機能の搭載、広角29mmのレンズ、ISO2500相当の高感度撮影を可能とするなど、これまでの携帯電話向けカメラ機能を大きく上回る性能とした。

 シャープの松本雅史副社長は、「携帯電話で、デジタルカメラ画質を実現できる時代になり、いよいよデジカメいらずの世界がやってきた。だからこそ、今年はデジカメケータイ元年ということができる」と自信を見せる。

ケータイ活性化の切り札に

 シャープは2000年に、J-フォン(現ソフトバンク)向け携帯電話「J-SH4」に、カメラ機能を初搭載して以来、同機能の進化をけん引してきたという自負がある。また、デジカメ事業をもたないだけに積極的に携帯電話のカメラ機能強化に乗り出せるともいえる。

 市場低迷を余儀なくされている国内携帯電話市場において、同社が「元気なケータイ!シャープ」を打ち出しているのは、デジカメ機能という切り札を持っているからにほかならない。
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