店頭流通

鼻息荒い「台湾勢」 日本メーカーを攻略

2009/06/22 17:00

週刊BCN 2009年06月22日vol.1289掲載

クリックで拡大  ネットブックのヒットで勢いづく台湾パソコンメーカーが、日本メーカーの“攻略”を着々と進めている。台湾で6月2~6日に開催されたアジア最大級のコンピュータ見本市「コンピューテックス台北」では、ブランド認知度を急速に高める台湾メーカーが、価格戦略や巧みな用途提案で自社製品を売り込む姿が目立った。世界規模の量産効果を武器に、日本勢が強みとするノートパソコンや情報家電、モバイル機器に猛攻をかける。「日本のIT商材は、携帯電話の“二の舞”になる」と豪語する台湾メーカーの経営幹部の声も聞こえてくる。

 大手パソコンメーカーの台湾アスーステックコンピュータが、ネットブック(いわゆる5万円パソコン)を考案したのは、電子部品の断続的な価格下落傾向と、ユーザーの需要を上回る速度でIT機器が高性能化するオーバーシュート現象を「逆手にとったらどうなるだろう」(沈振来社長)という発想からだった。

  市場には、“インターネットにさえつながればいい”というライトユーザーが数多くいる。電子部品の価格が下がり、オーバーシュートぎみの商品が市場にあふれているなら、用途を限定し、大量に売れば、量産効果でコストを抑えた低価格製品がつくれる。世界のノートパソコンでブランド力があるソニーや東芝など日本のパソコンメーカーを追い落とすにも、価格は重要な要素。日本では20万円するB5型の国産高級モバイルパソコンの市場を、台湾勢の5万円前後のネットブックや、10万円以下のスリムノートが食い荒らす。これが、例えば中国やロシア、南米などの新興地域なら、価格の高い製品はより一段と苦戦を強いられることになる。


 もう一つ、台湾ベンダーが注目するのは情報家電とモバイル分野だ。国内でしか通用しないプロプライエタリ(閉鎖的)な携帯電話に固執し、海外進出に失敗した日本のITベンダーを詳細に分析しており、オープンであることを重視する。ある大手台湾ベンダー幹部は、高精細な映像と引き替えに、地デジの無料一般放送まで暗号化し、B-CASカードに代表される独自のアーキテクチャで情報家電系の市場を固める日本のやり方は、「携帯電話と同じパターン」と、冷ややかにみている。

 見方を変えれば、これが参入障壁となり、台湾勢などの海外ベンダーは日本の情報家電に入りにくくなる点も、携帯電話と共通項が多い。別の台湾メーカー大手幹部は、「ゲームと同じで、攻めるより守るほうが難しい」と指摘。アスースと並んで販売台数を伸ばす台湾エイサーの王振堂会長は、「日本向けに特別な投資をせずとも、世界で通用する価格と品質、デザインをつくったら、結果的に日本でもシェアを獲れた」と明かす。パソコンや情報家電などのIT機器は、量産効果を全面に出す世界のパワーゲームに勝つことが競争優位性を高める必須条件。日本メーカーは、世界を手中に収めようとする台湾や米中メーカーに追い落とされる前に、再度、戦略を見直す時期に来ているのかもしれない。(安藤章司)
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