このコーナーでは、店頭販売に注力するメーカーの販売第一線の動きを紹介する。(上)では各社の販売戦略や体制を、(下)では現場の奮闘ぶりを追う。

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西谷考弘 取締役
 「販売店とのコミュニケーションを大事にしている。お客さまからのクレームがないかなどを聞いて回り、できる限り丁寧に対応していく」(西谷考弘取締役)。AOSテクノロジーズが心がけていることを簡潔に表現するならば、この西谷取締役の言葉に集約される。

 「製品のネーミングには、とくに気を遣っている」(西谷取締役)のも、販売員の声から学んだことだ。AOSテクノロジーズの「ファイナル」シリーズは、今でこそBCNランキングのシステムメンテナンス部門で上位にランクインする常連だが、以前はその名前を聞いて分かる人が少なかった。そのうえ、同社は製品タイトルのつけ方に無頓着だった。

 PC環境移行ソフト「ファイナルパソコン引越し」は、もともとアプリケーションの移行ができない製品も同じタイトルで出荷していたのだ。それを「紛らわしい」という販売員の指摘を受けて「ファイナルパソコンデータ引越しライト」として新しく売り出した。そのほか「前作との違いをシンプルに。どういう場合に使ったらいいかをパッケージに表示したほうがよい」といったように、さまざまなアドバイスを受けてきた。新製品をリリースすると、「つい、機能を前面に押し出してしまう」(西谷取締役)ことになりがちだが、アドバイスをもらうことで「メーカーのエゴにならないようにしている」と襟を正す。

 店頭の販売員の声を吸い上げて製品の改善に繋げるだけではない。「95%データ復旧ができている」ことを謳う同社のデータ復元ソフトの試供版を量販店で配布し、懸念や不満をなくすように努めている。量販店からは「そちらからの提案がない」という批判もあるという。意見を拾うことばかりに気が向かい過ぎていることを感じているのだ。こうした点について西谷取締役は、「当社サイドからの提案が必要だと思っている」と語る。ただ、基本は販売現場の生の声の収集に置く。「販売員へのアプローチは愚直に。地道だが大事にしたい」ということを方針として掲げる。(信澤健太)