時の人

<インタビュー・時の人>LoiLo 代表取締役CEO 杉山浩二

2010/04/01 18:44

週刊BCN 2010年03月29日vol.1327掲載

 ゲーム会社のクリエーターだった杉山竜太郎・浩二兄弟が二人で設立したベンチャー企業、LoiLo(ロイロ)。直感的なインタフェースと高速処理が強みの動画編集ソフト「Super LoiLoScope」を開発・販売している。2009年には、グッドデザイン賞の中小企業庁長官賞を受賞。自ら開発を手がけた製品に自信をもつ杉山浩二・代表取締役CEOに、これまでの歩みと今後の展望を聞いた。

2010年内の黒字化を目指す
パラダイムシフトをチャンスに

Q コンシューマ市場での手応えは?

 「私自身はクリエーターなので、販売の専門家ではない。試行錯誤で、一つひとつ、失敗を積み重ねながら進めてきた。例えば、家電量販店の店頭でパッケージ製品が売れても、中間に卸業者が入るので、当社の利益は店頭価格より大幅に少なくなる。初歩的なことだが、実際にやってみて初めてわかった」


 「店頭のパッケージ販売では、他社ソフトとどこが違うのかをお客様に理解していただかなければ、なかなか売れない。当社のような中小メーカーは、PRにかなりコストをかけないと訴求できない。例えば無料体験版や、デジタルフォトフレームで使い方を示した動画を流すなど、努力をせずには売れないだろう。一方、Webサイトならコストを抑えながら製品を紹介し、提供できる。この点で、ダウンロード販売に期待している」

Q 09年の動画編集ソフト市場は、販売台数・金額ともに前年割れだったが…。

 「アップルのオンラインアプリケーションストア『App Store』のような、ユーザーが必要としているときにすぐにソフトを提供できる『売る商流』を作れば、当社の商品は売れない商材ではないと思っている。その点、『App Store』はうまくできている」

 「デジタルビデオカメラだけでなく、コンパクトデジタルカメラ、携帯電話など、動画を撮ることができるデジタル製品は増えている。これまでビデオカメラを使わなかった人が、動画編集ソフトを使ってくれるようになる。今後は『YouTube』などの動画共有サイト、ブログ、SNSへのアップロードを中心とした“PCで動画を活用する”というニーズが高まり、それが追い風になるとみている」

Q 10年2月、文教市場向けに初めて動画編集ソフト「ロイロエデュケーション」を投入した背景は?

 「NHKの教育・教養番組の企画制作を行うNHKエデュケーショナルが、08年秋に実施した子ども向けのイベント『こども映像制作ワークショップ』に協力したことがきっかけだった」

 「最近、学校現場では、先生が行事などの思い出に映像や写真を撮って、メディアに保存したり、メディアを保護者に手渡ししたりすることがある。学校の協力を得て、授業で活用していただいたところ、子どもたちは、自分なりの使い方で、ゲーム感覚で楽しみながら操作していた」

 「製品を先生方に知っていただくために、業界新聞に取材してもらったり広告を出したりして、露出を増やした。この市場ですそ野を広げていくには、先生方のリテラシーの向上と意識の変化が重要だ。加えて、NTT Com チェオを通して、教育委員会にも営業をかけていく」

Q 2010年の見通しは?

 「動画編集ソフト市場は、先行者利益の市場だ。また、ソフトそのものの特徴として、ユーザーは使った経験のある製品を買う『経験商品』でもある。こうしたなかで、同じ機能のものを作っていては売れない。そこが、パラダイムシフトを生み出すチャンスになる」

 「販売施策としては、メーカー各社と協力して、デジタルビデオカメラやデジタルカメラなどのバンドルに力を入れ、売り上げを伸ばしていきたい。文教向けの『ロイロエデュケーション』とあわせて、2010年内の黒字化を目指す」

・思い出に残る仕事

バンダイナムコゲームスでは、プログラマを務めた。この時代に手がけたアーケードゲーム「戦場の絆」に思い入れがある。プログラマ5人、チーム全体では20人程度で、3年ほどかけて取り組んだ長期プロジェクトだ。180度の映像を映し出すドーム状スクリーンを初めて採用した製品だった。この仕事を通して、「必要とされる製品とは何か」という商品作りの基本を学んだ。
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