時の人

<インタビュー・時の人>レノボ・ジャパン 代表取締役社長 ロードリック・ラピン

2010/10/07 18:44

週刊BCN 2010年10月04日vol.1352掲載

 中国とアメリカに本社を置くレノボの日本法人、レノボ・ジャパンは、コンシューマ分野において、2008年12月にノートPC市場へ、10年3月にデスクトップPC市場へそれぞれ参入し、シェアを拡大しつつある。市場参入の1か月前、08年11月にトップに就任し、アグレッシブに事業拡大に取り組んできたロードリック・ラピン社長に、コンシューマ戦略を聞いた。(取材・文/ゼンフ ミシャ)

認知度向上活動に全力投球
スレートや3D対応モデルの投入も

Q デスクトップ事業に参入しておよそ半年。感触は?

 「思っていた以上に成功している。シェアはまだ小さいが順調に伸びており、参入は正しかったというのが今の感想だ。また、ノートPCも販売が伸びている。しかし、当社はいずれのタイプも、ミドルレンジでは強いが、ハイエンドではまだ国内メーカーに勝てていない。これから、ハイエンドのセグメントで当社の立場を強化することに挑戦していく」


Q 国内メーカーと比べ、レノボはまだ認知度が低いような気がするが…。

 「まさにその通り。レノボ・ジャパンは2005年の設立で、まだ若い会社だ。認知度の向上は当社にとって最も重要な課題であり、ブランド構築に力を入れている。重視しているのは、店頭販売の強化。当社がもつリテールパートナーとの関係を深め、大手家電量販店で存在感を示したい。ここ数か月、すでにいくつかの店舗に『レノボコーナー』を設置してもらうなど、成果がみえ始めている。さらに当社のコーナーを増やしていくために、リテールパートナー戦略を強化する。来年度(2012年度3月期)はマーチャンダイジングへの投資を倍増し、商品の技術や投入のタイミングを改善することで、量販店にとっての当社製品の魅力を向上させたい」

Q 投資倍増というのは、かなり攻撃的な戦略だ。

 「それを承知のうえで、成果を求めて踏み切った」

Q レノボは、コンシューマでメーカーシェア1位を誇る中国をはじめ、世界市場で強い。グローバルのなかで日本市場をどう位置づけるのか。

 「日本は現在、世界で3番目に規模の大きいPC市場で、当社にとって非常に重要なマーケットだ。グローバルでみれば、中国やインドなどの新興国市場で今後の大きな成長を見込んでおり、キーマーケットに位置付けている。これに対して日本市場はフラットで、大きな成長は見込んでいない。だからといって、重要ではないというわけではない。フラットで推移してもまだまだ規模が大きいし、最先端技術や洗練されたデザインに対するユーザーの意識が高いので、マーケティング活動としても注力すべき市場だ」

Q 最近、iPadが人気を集めている。

 「技術の話は別にして、アップルがiPadのような新型デバイスを投入し、PCのエコシステムに大きな変化をもたらしたのは、素晴らしいことだと思っている。iPadの人気はわれわれとしても無視できないので、当社もスレートタイプのモデルを投入する。今年末にまず中国で発売し、来年には、日本を含めた主要市場で発売する予定だ」

Q もう一つ、旬のトレンドは「3D」だ。

 「3Dの波には乗っていく。来年前半に、3D対応モデルの投入を予定している。新モデルは、単に3Dというだけでなく、何らかの付加価値を付けて開発している」

Q 今後の目標は?

 「ノートとデスクトップを合わせたコンシューマ向けPC事業では、短期的に10%のメーカーシェアを目指している。速ければ速いほどいい。もちろん、10%で満足するというわけではない。認知度を高めながら、長期的にはさらに高い値に挑戦していきたい」

・思い出に残る仕事

 オーストラリア出身のラピン社長は、レノボに入社する前の11年間、デルに在籍。アジアの国々で経験を積んできた。日本や韓国、シンガポールなど、それぞれの勤務地で異なる文化や習慣に触れながら、アジアの商慣習に精通するエキスパートになっていった。これらの経験が、今のレノボでの仕事に大いに役立っているという。国境を越え、さまざまな国でビジネスを経験してきたからこそ、グローバルな企業を目指しているレノボの進展に貢献できると自負している。
  • 1

関連記事

レノボ・ジャパン 店頭販売強化に向けて営業増員 名古屋に巡回拠点新設へ

【店頭販売奮闘記】レノボ・ジャパン(前編) 国内メーカーの優れた部分は見習う

【店頭販売奮闘記】レノボ・ジャパン(後編) 「レノボとは何者なのか」を伝えることから

レノボ・ジャパン、研究開発拠点「大和事業所」をみなとみらい21地区に移転