設備商材がITシステムに
防犯カメラと言えば、以前は小売店舗など向けの設備商材の一つだった。かつてはリモコンで動作する電気錠のビジネスを手がけていたが、2010年を境にAI技術が急速に進展。防犯カメラの位置づけが大きく変化する兆しを見逃さなかった。
設備メーカーから認証系AIベンダーに大きくかじを切った経営判断は見事に的中。納入社数は一気に6500社を突破し、昨年末には当時の東証マザーズ市場に株式上場を果たした。
市場の波にうまく乗った今、防犯カメラは「万引き常習者や、商品を故意に汚すなどの問題顧客を自動検出するITシステムとして受け入れられるようになった」とみている。
低廉な「実用車」で勝負挑む
AI顔認証は、世界的に競争が激しい。各ベンダーがしのぎを削る様相は、自動車レースのF1に似ているとみるが、正面から戦うつもりはない。
「当社は低廉な実用車の量産技術の領域で勝負する」。顔認証はカメラ端末とネットワーク、AIソフトウェアの三つが合わさって成り立っている。他社のように最先端の技術をふんだんに活用するよりも「いかに少ないITリソースで顧客の要求を満たすか」という道を選び、コストに厳しい小売店舗のユーザーをうなずかせている。
海外への進出拡大を視野に
技術開発に当たっては、実用化のスピードが速い中国と韓国の企業に加え、歴史的に安全保障の意識が高いイスラエルの企業との意見交換が役に立った。ITの世界は米国が中心とされてきたが、領域によっては他国に一日の長があることを知った。
世界の状況を見聞きした経験は、個人情報の保護に敏感な国内ユーザーの説得にも生かせた。「防犯カメラの導入には抵抗感が根強くあったが、先行する海外事例を参考に、懸念を一つ一つ解消して販売にこぎ着けた」と振り返る。
AIとカメラを融合させるには、ハードとソフトの両方に精通した技術者が欠かせない。より多くの優秀な技術者を確保するため、20年には韓国にも開発拠点を開設した。安くて実用的であることを強みに「ASEANや中東、中南米などの海外市場への進出拡大を視野に入れている」と鼻息は荒い。
プロフィール
谷口辰成
1976年、福島県生まれ。95年、県立安積高等学校を卒業。外資系IT企業などを経て2002年、セキュアを起業。代表取締役に就任。
会社紹介
AIを駆使した防犯カメラや顔認証・指紋認証を活用した入退室管理システムを開発。小売店舗では防犯のみならずマーケティングや営業支援などへの応用が進む。昨年度(2021年12月期)の連結売上高は前年度比21.1%増の33億円、営業利益は1億5500万円。従業員数は約100人。