これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Exas・田口裕一代表取締役」を取材しました。
スクラッチ開発への強いニーズ
自社は中堅企業を主要顧客として、基幹システムの刷新支援を手掛けている。現代では「Fit to Standard」の考え方の下、パッケージ型製品を導入するのが一般的だが、それほど容易なことではない。各社には各様の業務フローがあり、簡単には乗り越えらないハードルが存在するからだ。スクラッチ開発への強いニーズは、起業して初めて認識できたという。
基幹システム刷新の「成功請負人」を自負する自社は、「Fit&Gap」の掘り下げを重視している。顧客業務のどの部分がパッケージに適合、あるいは乖離しているのか。その見極めが、高いハードルを超えるかぎになる。
誠心誠意できることを
新卒時の就職は、リーマン・ショックによる景況悪化が影響し、大きく苦戦した。やっとの思いで入社できたのはいわゆる「ブラック企業」。大量の電話セールスやアポイントメントなしの訪問など、辛い営業活動を強いられる日々だった。
そんな中で、突然の飛び込み営業でもわざわざ時間を割いてくれる経営者は、「まるで神様のように見えた」。非常識な相手でも会ってくれる人に不義理はできない。「誠心誠意できることをやろう」と心に誓ったことが、ビジネスパーソンとしての原体験になっている。
本質的な構造を考える
基幹システムの刷新は、社内のさまざまな人間の思惑が複雑に絡まり、うまく進まないケースは少なくない。そこで役に立っているのは、学生時代に専攻した哲学の「アナロジー」(類推)の手法である。これは、ある問題に対して似た構造の事象を当てはめ、解決策を探る方法だ。ある人物が主張したことの本質的な構造を考えると、別の人物の主張とも共通する要素が見えてくる。
一貫しているのは「ユーザーが何を望んでいるか」を確かめることだ。表面上は異なる意見でも、本質では同じ思いを抱いていることもある。徹底した業務フローの見極めと、顧客が抱えるさまざまな思いの分析。誠心誠意、どこまでも顧客目線に立って、刷新プロジェクトを成功に導く。
プロフィール
田口裕一
1987年、埼玉県生まれ。2011年、早稲田大学卒業。12年、ワークスアプリケーションズ入社。18年、ミロク情報サービス入社。21年、SREホールディングス入社。23年、Exasを創業。
会社紹介
中堅企業向けの基幹業務システム導入支援を手掛ける。業務分析や要件定義などの上流工程に強みを持ち、スクラッチ方式で開発するプロジェクトを数多く実施している。