マイクロソフトは、2003年第3四半期（7-9月期）に発売予定の「オフィス11」（開発コードネーム）の機能の一部を、3月3日に開催した「Information Worker Day 2003」で公開した。Information Worker（インフォメーションワーカー）とは、これまでのナレッジマネジメントをさらに進化させたコンセプトで、より広い層を対象とするものだと同社では位置づける。オフィス11は、インフォメーションワークを支援する新機能を搭載することで、これまでグループウェアを活用して進められてきた「企業内の生産性向上」という課題に挑む。（三浦優子●取材／文）

「インフォメーションワーカー」を提唱

■ナレッジマネジメントを拡大

　「コンピュータの無限の成長を、人間の無限の成長につなげていく」――。マイクロソフトの阿多親市社長は、インフォメーションワーカーという新しいコンセプトを紹介するにあたり、こう宣言した。

　インフォメーションワークとは、人や情報、業務プロセスなどを相互につなげ、従業員の可能性を引き出し、企業の生産性と創造性を最大限に向上させるワークスタイルだと、マイクロソフトでは定義する。意志決定、アクセス、理解と吸収、コミュニケーション、コラボレーション、文書作成という6つのベクトルで実現していくという。

　グループウェアの世界で盛んに使われてきたナレッジマネジメントをさらに拡大したようなコンセプトであり、電子文房具としての表計算、ワープロなどのソフトウェア、電子メールやブラウザなどのコミュニケーション機能、さらに人とプロセス、データの有機的結合というすべてを包含したコンセプトである。

　オフィス11では、インフォメーションワークを実現するための新しい機能が搭載される。例えば、新機能「InfoPath（インフォパス）」を使えば、「三浦優子」という言葉を氏名として設定しておくことがプログラミングなしにできるので、データの中から氏名だけを呼び出して再活用することが容易に行えるようになる。現在の作業工程にありがちな、エクセルで作った表データを、コピー＆ペーストして使うといった手間がなくなる。

　アウトルックでは、同じチームに設定されているメンバーの予定を確認し、それぞれの空き時間に会議を設定。メンバーにはメールで通知するといったことも可能となる。

　セキュリティ機能としても、「Windows Rights Management Services」を活用すれば、メールの転送禁止、閲覧回数の制限、期限の制限など、メールの使い方をコントロールすることができるようになり、より安全にメールを使うことができる。

■目的は「企業内の生産性向上」

　これまでのオフィスは、いわゆるOA化に主眼を置いた機能拡張がなされていたのに対し、今回公開されたオフィス11の新機能は、グループウェアなどで盛んにアピールされてきた「企業内の生産性向上」を実現しようとしている。これまでのオフィスの進化から、さらなる進化が始まったオフィスシリーズといえるかもしれない。

　これは、他の企業向けアプリケーションをもつベンダーにとって大きな脅威となってくるだろう。

　だが、マイクロソフト自身にとってはどうなのか。アウトルックの機能の一部など、サーバーソリューションを使っていなければ実現しない機能もあるというものの、「オフィスだけ導入していれば十分」というユーザーや、逆に「ここまでの機能充実は必要ない」と考えるユーザーを生むことになりはしないか。

　マイクロソフトにとって、オフィス11の進化は、大きな賭けともなる新しい一歩といえそうである。