セキュリティが訴求ポイント

　マイクロソフトの統合オフィスソフト「オフィス2003」の売り方を巡り、システムインテグレータの知恵比べが続いている。企業ユーザーの大半は、すでにマイクロソフトの過去バージョンのオフィスシリーズを導入済みであるため、「文書作成のワード、表計算のエクセルなど、古典的な切り口で売り込んでも、まず売れない」（システムインテグレータ関係者）という。

　大塚商会では、オフィス2003発売のタイミングに合わせて、昨年9月からオフィス2003の拡販を目的としたセミナーを全国各地で開催してきた。このセミナーでは、当初、XML連携とセキュリティの2つのテーマを中心に据えた。オフィス2003から新しく採用した〝売り〟の機能が、この2つだからだ。

　セミナーでは、XMLでオフィス2003と基幹系システムなど、他システムとの連携に関する説明が全体の約8割、内部情報漏洩の防止に関するセキュリティの説明が約2割の配分にした。これに対して、顧客が感心を示したのは新しいオフィスの〝機能〟ではなく、「どうしたら内部情報の漏洩を防止できるか」というセキュリティに集中した。

　大塚商会の宮川勉・マーケティング本部テクニカル販売促進部マイクロソフトグループ課長は、「新しいオフィスそのものに興味を示すパワーユーザーの絶対数が少ないことは、あらかじめ分かっていた。だが、セミナーの後半部分で軽く触れただけのセキュリティに、顧客がこれほど強い関心を示すことになるとは意外だった」と話す。

　このセミナーを通じて手応えを得た大塚商会では、当面の間、中堅・中小企業向けのオフィス2003の販売戦略の重点を、セキュリティに絞る方針を固めた。「セキュリティ商材の1つとして、オフィス2003やウィンドウズサーバー2003、保守サービスなどを組み合わせたメニューを新しくつくることを検討中」という。

　富士通ビジネスシステム（FJB）は昨年11月、マイクロソフトのサーバー製品やウィンドウズサーバー2003の基本機能を活用したソリューションを体系化し、「ソリューション スイート フォー ウィンドウズ」として売り出した。ウィンドウズアップデートやエクスチェンジなど4種類をパッケージ製品として、ハードウェアやシステム構築費用などを含め、これまでの約半額の価格に抑えた。

　FJBでは、このソリューション体系にオフィス2003を加えることで、拡販につなげる。第1弾として検討しているのが、ウィンドウズサーバー2003とオフィス2003を組み合わせた内部情報漏洩を防ぐセキュリティ対策のパッケージ化だ。ソフトウェアのライセンス料やハードウェア、システム構築などの費用をすべて含んだパッケージ製品として、中堅・中小が導入しやすい価格に抑える。

　FJBの藤本政久・マーケティング本部営業推進統括部ソリューション推進部長は、「とにかく、導入時のハードルをできるだけ下げるのが先決。オフィス2003のセキュリティ機能は、顧客企業にとって理解しやすい。これに加えて、価格体系を明確かつ割安にすることで販売促進に結びつける」と意気込む。システムインテグレータ関係者の1人は、「セキュリティや、基幹系と情報系とのXML連携などの提案のなかにうまく埋め込まないと、オフィス2003は売れない」と打ち明けている。