パソコン専門店や家電量販店で中古デジタルAV（音響・映像）機器の販売がにわかに動き出している。PDP（プラズマディスプレイパネル）や液晶テレビなどの薄型テレビ、DVDレコーダーなどの市場が急速に拡大しているのを背景に、中古デジタルAV機器の販売が好調だ。ショップにとっては、中古販売の新しい商材としてデジタルAV機器が柱の1つになりつつある。新品パソコンの販売が厳しい状況を強いられるなか、最近はリユース事業の本格化を図ろうとするショップが増えている。リユース事業を拡大させていくうえで、中古デジタルAV機器が重要なアイテムになる可能性が高い。（佐相彰彦●取材／文）

リユース事業の新しい商材に

■売れ行き順調な中古DVDレコーダー

　リユース事業に力を注ぐソフマップでは、東京・秋葉原電気街の「カクタソフマップ」をはじめ、JR名古屋駅構内の「ギガストア名古屋駅ナカ店」など、中古デジタルAV機器を販売する店舗を増やしている。

　DVDレコーダーの中古販売は、夏商戦が幕を開けた今年6月が前年同月比で3倍以上で推移。名古屋駅ナカ店で販売している液晶テレビのリユース品についても、「中古DVDレコーダーほどではないが、着実に購入者が増え始めている」（松田信行・総合企画部広報・IR室長）と、中古デジタルAV機器が順調な売れ行きを見せていると強調する。

　同社では、新品のデジタルAV機器も取り扱っている。ギガストア名古屋駅ナカ店では、入り口近くで新品と中古の液晶テレビコーナーを設置。来店者は価格や機能などが比較でき、「液晶テレビ自体を拡販する相乗効果につながっている」（足立博之・ギガストア名古屋駅ナカ店長）と戦略は的中したようだ。

　ラオックスでは、中古パソコン専門店の「ピーシーエキスポ秋葉原本店」で中古DVDレコーダーの販売を今年8月から開始した。8月下旬の段階ではまだ販売の面で大きな効果は表れていないものの、「パソコンを購入するために来店したお客さんのなかで、家族連れはDVDレコーダーの中古品を興味深くみている」（内川政典ストアマネージャー）としており、「DVDレコーダーが収益を確保できる柱の1つになる可能性は高い」とみている。

■新しい商材で収益増の可能性大

　パソコン専門店や家電量販店では、売上構成比で最も高かったコンシューマ向けパソコン本体の販売が依然として厳しい状況にあることから、リユース事業の強化を打ち出している。

　アロシステムは、ソフマップと中古FC（フランチャイズチェーン）に関する業務提携を行い、BTO（注文生産方式）パソコンショップ「パソコン工房」で中古品の販売に力を入れている。昨年度末でソフマップの中古FC「ソフマップ・ユーフロント」を設置した店舗数は11店舗。今年度中にはほぼ全店にあたる80店舗まで拡大する計画だ。中古パソコンの販売が主流ではあるものの、「土日に家族連れが多く訪れるため、DVDレコーダーを中心に中古デジタルAV機器も販売していきたい」（平田英明・九州ブロック部長）という店舗も出てきた。

　エディオンもソフマップと業務提携し、リユース事業を本格的に展開する計画を立てている。同社では、エイデンで中古パソコンを販売しているものの、系列のデオデオでは中古品の販売を行っていない。提携したのは、リユース事業の強化にあたり、「中古パソコンだけに限らず、商材を幅広く扱っていく」（久保允誉・エディオン社長）のが目的。

　ソフマップと提携し、どのような形態で中古販売を強化していくかは今後詰めていくが、エディオンにとっては中古デジタルAV機器の仕入・販売ノウハウをソフマップから吸収することになる。

　中古品は、新品の販売と比べ粗利率が高いといわれている。リユース事業の要になっている中古パソコンに加え、需要が増加傾向にあるデジタルAV機器が中古品の新しい商材カテゴリーとして成長すれば、ショップの収益向上にもつながる。