その他
初の商用コンピュータ導入から50年
2005/10/10 14:53
週刊BCN 2005年10月10日vol.1108掲載
ソフト開発が情報化進展のカギに
2005年は戦後60年の節目であると同時に、初の商用コンピュータ導入から50年という年でもある。商用分野で初のコンピュータは、1955年、東京証券取引所と野村證券に導入された。ともに真空管を使った「ユニバック120」という機種で、同じ船便で横浜港に陸揚げされたという。この50年間のコンピュータの歴史を改めて振り返るまでもなく、企業活動になくてはならない情報システムの中核というにとどまらず、一般家庭の多くがパソコンを保有し、インターネットを使ったメールやショッピングなどを楽しめるまでになった。
コンピュータハードやソフトの劇的な進歩の影で、昔からあまり姿を変えていない部分もある。商用分野でコンピュータ導入が進むのと並行して、中央官庁だけでなく地方の自治体、特に都道府県庁などの行政分野でも活用が始まった。この時、各地にコンピュータを使った受託計算を行う「計算センター」が地元有力企業や自治体などの後押しで設立された。やがて大型コンピュータの低価格化が進み、自治体や地元企業でも自前でコンピュータを導入するのが当たり前となり、「計算センター」はシステムインテグレーション(SI)を生業とするようになる。その際に、「計算センター」という色を企業イメージにも業態にも残したまま、社名から「計算センター」を捨て去った企業も多い。しかし、そうした企業も実態としては、受託計算やコンピュータ運用に携わる人材の派遣という業務は残った。
「計算センター」が母体である地方のあるSIのトップは、「(受託計算業務は)今年の委託料がいくらだったので、来年も同じくらいにという契約が長年続いてきた。変化の激しい時代になって、そうした習慣も変わらざるを得ないのだが…」と、ビジネスモデルの変革に遅れていると吐露する。「かつては、コンピュータのノウハウは計算センターにしかなく、顧客には知識がなかった。しかし、今では顧客側も情報システムのノウハウやスキルが高まっている」と、十年一日といった風情のビジネスモデルは、過去のものになったという。だが、地元の有力企業などが出資し、そうした有力企業や自治体を顧客としてきた〝安定経営〟のなかでは、時代の変化についていきにくかったのも事実だ。
情報システム構築には業務スキルが不可欠だ。地方の「計算センター」でも業務スキルだけでなく、地元での知名度や経済発展に貢献してきた長年の蓄積は大きな財産。しかし、首都圏の大手SI企業やメーカーが、どんどん地域の市場にも進出しており、そうした財産を生かす間もなく競争に晒されている。
10月は情報化月間である。わが国の情報化は着々と進んでいるのだろうか。e─Japan戦略では、ネットワークインフラ構築をはじめとして公共の様々な分野の情報化を進め、05年の今年に「世界最先端のIT国家」を目標にしてきた。その目標達成に重要な役割を担うべきSIの世界は、ニーズは拡大しているのに〝3K職種〟と学生にも敬遠され、就労者の減少、不採算プロジェクトや単価ダウンによる利益率の悪化に陥っている。地方のSIに目を転じれば、地元企業の情報化投資の伸び悩み、大手の進出、首都圏中心のソフトビジネスに対応するための人材派遣など、経営にプラスになるような要素を見出すことは難しいのが実態だ。
商用コンピュータが導入されてからちょうど50年。情報化の進展による経済活動の発展と生活の様々なシーンでの利便性向上を享受している裏で、何かを置き去りにしてはいないだろうか。ソフト開発ビジネスに、もっと日が当たらなければ、日本の情報化のスピードが鈍ることにはならないだろうか。 川井直樹(本紙副編集長)●取材/文
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