その他
NTTデータ ASP料金 月額40円の衝撃 ソフトビジネスが変わる
2006/02/06 21:10
週刊BCN 2006年02月06日vol.1124掲載
ソフトウェアの価格決定メカニズムの確立手法が問われるなかで、NTTデータが今年7月から全国でスタートする月額利用料40円のASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)サービスの衝撃が広がっている。
受託、パッケージ型からサービス型モデル構築へ
迫られる現行価格体系の見直し
同社は1月25日、学童に関する情報を学校と父兄の間で共有する連絡網サービス「子ども安全連絡網FairCast(フェアキャスト)」を初期設定費用100円、月額利用料40円で提供すると発表した。料金設定は浜口友一社長自身の判断だったことがBCNの取材で判明、同社のソフトビジネス戦略が大きく転換しつつあることを示している。FairCastは小中学校とPTA組織向けだが、地方公共団体や医療機関などにおける職員の緊急呼び出し、地域住民への災害情報の提供、ダイレクトメールなど適用領域は幅広い。受託開発やパッケージ販売で収益を得る従来のソフトビジネスをサービスモデルに転換することになる。
今回のASPサービスが衝撃的なのは、利用料金がマーケット・ドリブンで決定されたこと。これまでのASPサービス料金はシステム開発に要した費用を予想される利用契約数で割るか、パッケージ販売価格を月額に換算するケースが大半。 人月単価の経費積み上げを月額利用料金に付け替えたに過ぎず、ソフト価値評価メカニズムは変わっていない。
ASPサービスは当初、業務アプリケーション向けの新しいビジネスモデルと注目されたが、市販パッケージの低廉化で伸び悩み、現在は携帯電話向けアミューズメント系サービスが主流となっている。またCAD/CAMシステムなど業務パッケージの定額利用サービスは、市販価格を50分の1にするなど旧来型のレンタル制度にのっとった価格決定に従っているのが実情。
これに対してNTTデータは、今後のシステムサービス市場として中小・個人事業者や家庭に視点を定めた。ゲームや音楽配信などアミューズメント系サービスの考え方を業務アプリケーションに適用し、利用者が認める利用価値メカニズムを採用した。1ユーザー当たりの月額利用料金は極端に低いが、100万件単位のマスマーケットを獲得することで収益を上げる。
ソフトの価格体系については、経済産業省・産業構造審議会のソフトウェア小委員会でも見通しの動きが出ている。今年6月をめどに、ソフトウェア価値決定メカニズムに関する方向性を取りまとめる作業を進めており、ここでもベンダーサイドの積み上げ方式から利用者サイドのサービス価格への転換が検討されている。また総務省は地方公共団体共同アウトソーシング事業に採用する業務アプリケーションについて、ソースコードの公開とサービス型ビジネスモデルへの転換を提唱している。
今回、NTTデータはこうした動きを先取りしたもので、関係者によると初期設定費用100円、月利用料40円の設定は浜口社長の判断で決定したという。NTTグループが保有するITインフラ・リソースを組み合わせ、全国一律料金の低額ASPを展開することについて、ソフト業界から「NTTグループの独占的地位を強化することにつながり、自由競争の原理に抵触する」という声があがっている。とはいえ、人月単価の積み上げ方式に依存している現行の収益構造が利益率の低下を招いているのも事実で、月額40円サービスの波紋はさらに広がる様相を呈してきた。
【FairCast概要】
7月に開始する「子ども安全連絡網」サービスは、学校から学童の父兄に宛てたさまざまな連絡をITで実現する。日常のイベントばかりでなく、地域に出没する変質者の目撃情報や自然災害時の避難情報など、学校から発信する情報を音声(電話)、テキスト(メール)、イメージ(FAX)のマルチメディア・データに変換し、光ファイバー回線1本で最大500ユーザーに一斉同報できる。多種多様な端末との接続を想定し、サーバーにはLinuxなどオープンソース・ソフトウェアを採用、インターフェースを公開する。
事前にIDを登録した父兄に対して、学校発の情報を父兄が指定した最も受信しやすい機器(固定電話、携帯電話、パソコン、FAXなど)に一斉同報する。
学校や父兄は新たに機器を用意する必要がないうえ、専用サーバーに父兄のIDと電話番号しか登録されないので個人情報が漏洩するリスクが解消、出張先でも情報を受信できるメリットもある。同社勤務の女性社員が、小学校に通う子どもを持つ母親としての生活実感をもとにシステムを提案、奈良県生駒市で昨年11月から実証実験を行っていた。
この4月から教育委員会、学校またはPTA組織単位で受付を始め、7月から全国でサービスを開始する。1家庭当りのID設定料100円のほか、利用料金は利用頻度に応じ月額40円または70円となっている。金融機関のATM手数料や郵便局の振替手数料と比べても安い。
同社はこのシステムの適用領域を拡大する考え。地震や台風の際の地方公共団体職員や防災機関関係者への緊急呼び出し、地域CATVと連携した災害情報提供サービスなど公共分野への普及を目指している。また民間企業向けに営業マンへの一斉同報や顧客へのダイレクトメールなどの需要もあると見ている。
ソフトウェアの価格決定メカニズムの確立手法が問われるなかで、NTTデータが今年7月から全国でスタートする月額利用料40円のASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)サービスの衝撃が広がっている。
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