ホームネットワークの普及要件

　ホームネットワークは普及するのか──。デジタル家電やパソコンなど異種デバイス間でデジタルコンテンツを共有する規格「DLNA（デジタル・リビング・ネットワーク・アライアンス）」に対応したAV（音響・映像）機器が、この1─2年で、ソニーや松下電器産業など大手家電メーカーから相次ぎ登場している。しかし、「AV機器がせっかくDLNA対応であっても、ユーザー側で戸惑っている」（大手家電メーカー関係者）という声を聞く。家庭内でデジタルコンテンツを共有する利便性を理解するユーザーは少なく、ホームネットワークを浸透させるために、ユーザーが恩恵を受ける方法を業界全体で考えていく必要があろう。

　居間には薄型テレビが備えられ、各部屋にも小型テレビが1台ずつあって、HDD搭載のDVDレコーダー1台が設置されている場合、DLNA対応のAV機器同士であればHDDに格納した映像を2台のテレビで同時に視聴できる。かつてテレビのチャンネル争いが起きた家庭でも、DVDレコーダーを巡る〝家族争奪戦〟はなくなりそうだ。

　そんななか、沖電気工業は「07─08年にDLNAが普及期を迎える」（木村芳信・メディアネットワーク・アプライアンス・カンパニー商品開発第一部課長）と、DLNA対応の製品を出した。昨年6月に発表したゲートウェイプラットフォーム「BB Media Router（BBMR）」に、提携するACCESSのDLNA対応ミドルウェア「NetFront Living Connect」を組み込んだ。このBBMRは、家庭向けのゲートウェイとホームサーバー機能を兼ね備えたブロードバンドルータだ。「現段階ではトライアル的な製品」（同）との位置づけという。

　ADSLからFTTH（光ファイバー）にリプレースする時期にVoIPルータを買い換えるユーザー向けに「ホームネットワークができます」と触れ込み拡販していく。需要期を前にISPや通信キャリアに売り込み、買い換えを促進して、〝ホームネットワーク市場〟で業界を先導する目論見だ。

　ホームネットワークを起爆剤に、パソコンやデジタル家電の需要を喚起するには、基盤であるネットワーク環境を家庭内に普及させることが大前提となる。それが沖電気のBBMRだ。

　だが、大容量のデジタルコンテンツを相互利用するには、家庭の無線LANやADSL環境では、やり取りが厳しいため、次世代の無線通信規格やFTTHの普及が求められるという。次世代ネットワーク環境とDLNA製品の普及が相まって、ホームネットワークは浸透していくことになりそうだ。

　DLNAは、こうした環境でホームネットワークを実現するために有効な手段といえる。ソフトバンクが音頭をとり、ADSLが普及し、一気に家庭内のブロードバンド環境が進んだ頃を思い起こせば、ADSLから光ファイバーへのリプレースをきっかけに、DLNA対応のルータなどを普及できれば、ホームネットワークの拡大は夢ではない。まずは、ISPや通信キャリアがホームネットワークを見据えたムーブメントを起こすことに期待したい。 谷畑良胤／田沢理恵●取材／文