ネットワークインテグレータ（NIer）はハードウェアに固執したビジネスモデルからの脱却が急務になってきた。主要ベンダーの2006年度（07年3月期）の連結中間決算は、減収減益が相次いだ。スイッチやルータなどネットワーク機器の低価格化が進み、販売台数は増えても売上高が伸びないことが大きな原因。こうした状況下、各社ともサービスやサポート事業、新しいネットワークソリューションの創出などで業績不振の打開に力を注ぐ。（佐相彰彦●取材／文）

ハード固執からの脱却が急務

■厳しさ増す機器販売

　ネクストコムは、中間期の連結業績が売上高で183億8800万円（前年同期比8.7％減）と減収、営業利益で5億6200万円（同53.1％減）、経常利益で6億3400万円（同52.7％減）、最終利益で3億1600万円（同58.6％減）と大幅な減益。しかも、スイッチやルータの販売が中心の「データネットワークビジネス」分野は、売上高が102億8300万円（同15.6％減）と落ち込んだ。細野茂樹・経営企画部IR・広報室マネージャーは、「ネットワーク機器に対するニーズは低価格に集中している。そのため、下位モデルの販売が増えている。スイッチやルータは、販売台数が伸びても売り上げが伸びない状況が定着しつつある」ことが、売上高と利益ともに不振原因となった。

　ネットマークスでは、売上高が230億1800万円（前年同期比6.0％減）と下がり、営業損失が6億2500万円（前年同期は1億7300万円）、経常損失が8億100万円（同2億1800万円）、最終損失が16億1400万円（同2億5500万円）と赤字幅が広がった。スイッチやルータが主力製品の「ネットワークインフラ」事業は、売上高が101億5400万円（同5.3％増）と増えた。しかし、「ネットワーク機器市場をみると、ニッチな分野の新規メーカー参入やNGN（次世代ネットワーク）による国内メーカーの拡大はあるものの、基幹部分では有力機器メーカーによる寡占化が続いている。そのため、ネットワーク業界は厳しい状況から抜け出せない」（大橋純社長）。スイッチやルータの販売は、他社との差別化が図れず、価格競争は体力勝負になっているというわけだ。

　ネットワンシステムズは、売上高が500億1500万円（前年同期比1.8％増）と増加したものの、営業利益19億200万円（同57.5％減）、経常利益18億9600万円（同58.4％減）、最終利益10億9100万円（同59.2％減）と大幅減益となった。ネットワーク機器の売上高は315億900万円（同4.1％減）。加えて、「ハードウェアの粗利率は、前年同期と比べて2ポイント下がっている」（澤田脩社長）と、状況は厳しい。

■サポートやサービスにシフト

　NIer各社の06年度連結中間決算が厳しかったのは、主要事業であるスイッチやルータなどネットワーク機器の販売不振が大きく影響している。そのため、各社ともサポートやサービス、新しいネットワークシステムの創出などで利益確保を図っている。

　ネットワンシステムズでは、ネットワークの統合管理を切り口にオペレーティングセンター「エキスパートオペレーションセンター（XOC）」の設置でサポート・サービスを強化した。澤田社長は、「サポート・サービスは、今年度通期で売上比率25％に達する見通しだ。この分野の拡大で利益を伸ばしていく」としている。

　ネクストコムは、RFIDやアクセスポイントを無線でつなぐ「ワイヤレスメッシュ」など新しい技術を活用したシステム・サービスの創出に励む。細野マネージャーは、「徐々にではあるが、ソリューションの導入事例が出てきている」という。ネットマークスでは、「今後は、企業による内部統制への関心がますます高まってくるのではないか。しかし、現段階ではユーザー企業がどのようなシステムを導入すればいいのか頭を悩ませている状況。そのため、以前から手がけているセキュリティ・コンサルティングサービスの需要を増やしていく」（大橋社長）考え。

　各社とも、事業領域の拡大を急いでいる。ハードウェアの販売に固執しないビジネスモデルを構築できたベンダーが業績不振を打破することになりそうだ。