成長の“芽”育ち、次段階へ

　「国内ISVパートナーのイノベーションを世界で支える」──重点ISVを選出して、業種単位の展開や海外進出を日本法人や世界拠点で支援する体制にした日本IBMのISV戦略。新体制に移行して1年を経て、国内ISVの案件獲得や海外進出の〝芽〟が育ちつつある。今年度（2007年12月期）はIBMの世界的なリソースを活用することで、「数字に現す」（古長由里子・ISVデベロッパー事業推進部長）と、国内ISV事業の成長曲線を角度のある右肩に向ける意気込みだ。

　昨年、ISV向けの業種別販売支援プログラム「PartnerWorld Industry Networks（PWIN）」に、ISVや販社、SIerなどが参加する「PartnerWorld」を融合した。IBMは世界でソフトの業種ソリューションマップを作成。自社製品で全業種を賄うのでなく、各業種別に専門的なノウハウや実績のあるISV製品を融合し、ハードウェアやツール、サービスが有機的に連携してSOA（サービス指向アーキテクチャ）を構築、提供する体制を確立した。

　この展開は、国内ISVにくすぶっていた不満を解消するのに役立った。これまで、技術、動作検証、共同販売などの支援は強化されてきたが、「日本IBMの強大なハードウェア販社などとの連携性が薄い」と、ソフトとハードの販社連携がないための批判が渦巻いていたからだ。　昨年は、IBMミドルウェア対応の国内ISV製品を利用したソリューションが、前年までの約600件から900件までに増加。「国内ISV＋ビジネスパートナー＋日本IBM」の国内協業案件も1000以上が進行中。ISV事業が急速に進展し、古長事業推進部長は「1000件のうち、1─2割が成約する」と、上々の出来に喜びを隠さない。

　昨年10月からは、世界のIBMパートナーが利用できるバーチャルな検証環境を国内で提供を開始した。1つはIBM製品やアプリケーション開発、移行ノウハウなどをeラーニングで提供するサイト「バーチャル・イノベーション・センター（VIC）」の利用開始。マレーシアの技術担当者に対しチャットで質問を投げ、瞬時に回答を得られるという。また、IBMのハード製品やソフト製品をウェブ経由で遠隔地から利用でき、ISVなどがソフト開発の検証・テストをできる「バーチャル・ローナー・プログラム（VLP）」もスタートさせた。いずれも「PartnerWorld」参加ベンダーなら無償だ。

　日本IBMのISV戦略はこれまで、高い開発ツール、高い講習料金、高い販売目標の「3高」に阻まれ、国内ISVに敬遠されがちだった。この1年で、こうした負の遺産はほぼ払拭されつつある。昨年は日本IBMのビジネス・パートナーとISVが交流する「PWIN業種交流会」を全国で11回開催し、1892人／1051社が参加。「パートナー・ネットワークが加速中。交流を通じ案件も出ている」（古長事業推進部長）と、日本人うけする「ドブ板戦略」が板についてきた。

　海外展開でも、IBMの中国や韓国、米国などのISV担当者が来日。現在、国内ISV10社の海外進出を世界のIBMで支援中だ。確実に導入数を伸ばすうえで、今年は正念場を迎える。