SIerのトーテックアメニティ（坂井幸治社長、本社名古屋市）は、組み込みソフト事業を拡大させる。研修センターの機能拡充やソフトの動作検証を行うグループ会社の新設などを通じて受注拡大を目指す。名古屋に本社を構える地の利を生かし、好調な地元自動車産業の組み込みソフト需要の取り込み拡大を狙う。

　人材育成のため、これまで郊外にあった研修センターを今年1月に名古屋駅近くの新築オフィスビルへ移転。組み込みソフト関連の最新設備を揃えて大幅に機能拡張した。地元自動車メーカーの技術者OBなどを講師に招くなどして研修科目も充実させた。

　トヨタ自動車など地元の自動車関連産業が好調で、車載用の組み込みソフトの需要が拡大。ここにきて組み込みソフト開発の案件が急速に増えてきた。人手不足感も強まっていることから、研修センターの機能強化によって、「人材育成に取り組む」（坂井社長）。交通至便な駅周辺にセンターを設けたことで、社員は勤務時間の合間や週末などに研修を受けやすくなった。

　昨年10月に設立した会社で組み込みソフトの動作検証を行う予定であるなど、自動車関連の組み込みソフト需要の取り込みに力を入れる。

　昨年度（2007年3月期）の売上構成比は元請けのSIが約半分、大手SIerなどからの請負型のSIが約25％、エレクトロニクスや機械の設計が約15％、組み込みソフト系が約10％を占めた。

　業種別では組み込みソフトや一般民需に加えて、自治体の介護保険、病院の電子カルテなどのシステム需要も好調だ。今年度の連結売上高は前年度比約18％増の174億円と過去最高を見込んでいる。

　同社は1990年代前半に売上高が130億円強に達したが、ハードウェア製品への依存度が高く、後のハード価格の下落とともに売り上げが低迷。ソフト・サービスビジネスのノウハウを吸収するため、あえて大手SIerなどの下請けを増やしてきた。組み込みソフトの開発もメーカーなどから仕事を請け負う過程でノウハウを取得した。こうした取り組みにより、「ここ数年は元請けでとれる仕事の量、質ともに高まってきた」と手応えを得る。

　2010年3月期までの中期計画では連結売上高200億円、経常利益率6－7％を見込む。特定業種や組み込みソフトなど、「得意分野をより鮮明にする」ことで競合他社との差別化を図る考えを示す。