新たなエンタープライズ需要に照準

昨年から「アップルといえば大塚商会」をキャッチフレーズに展開している
　大塚商会が、マック関連ビジネスに力を注ぎ始めた。デザイナーやフォトグラファーといった、マックが得意とするプロフェッショナル向けの提案に加え、WindowsやLinuxとの混在環境におけるエンタープライズ需要の増加に対応。マックを組み込んだエンタープライズソリューション提案を加速している。マック専任部門の増員も視野に入れており、マックビジネス拡大を目指す。（大河原克行（ジャーナリスト）●取材／文）

■マック一色の展示会

　東京・秋葉原ダイビルの秋葉原コンベンションホール。5月9－10日の2日間にわたって大塚商会は、ユーザー向けイベントを開催した。だが、いつものイベントとは様子が違う。会場には、大塚商会が得意とする複写機やサーバー、クライアントPCを主軸にしたものでなく、マックばかりが並べられていたからだ。

　「MacZoo’07 in AKiBA」と呼ばれる大塚商会主催のこのイベントには、アップルジャパンをはじめとする41社がマック関連製品を出展。併催されたセミナーでは、会期前から延べ2000人が登録。どのセミナーもほぼ満席となった。

　デザイナーやフォトグラファーといった各種プロフェッショナル向けの製品紹介のほか、マックをビジネスシーンで利用するグループウェア、オフィス製品の展示に加え、マックとWindowsなどを混在させたエンタープライズ環境におけるソリューション提案を行ったのが特徴だ。

■SIerの付加価値ビジネス

　大塚商会マーケティング本部の後藤和彦執行役員は、「従来は、デザイン部門が独自にマックを導入するといった独立した導入が多かったが、ここにきて、マックを含めたエンタープライズ環境を構築したいという要求が増えている。だが、多くのSIerは、Windows、UNIX、Linux、メインフレームの混在環境には対応できるものの、マックに関するノウハウを蓄積していない例が目立つ。当社では、長年にわたるマックの取り扱い実績から、マック混在環境にも対応できる体制が整っている。競合するSIerからも、マックを含めた混在環境での展開では協業してほしいという申し入れがあるほど」と語る。

　言葉は悪いが、エンタープライズ環境を構築する現場では、社内にマックの存在を確認したとき、「地雷を見つけた」との表現が使われることもあるという。Mac OS XがUNIXベースになったとはいえ、SIerにとっては、避けて通りたいクライアントとなっている。裏を返せば、競合が少ない分、収益性の高いビジネスモデルを確立できるともいえる。

■将来を見据え専任体制で

　大塚商会では、昨年秋にアップルジャパンとディストリビュータ契約を結び、マック取り扱いの体制を強化。アップル専任プロモーションチームや、エリアで展開している首都圏およひ関西地区のマック専任サポートチームを含めて約40人の専任体制を確立している。

　「事業の拡大にあわせて、サポートチームの人員を増強する考えもある。エンタープライズソリューションへの展開には、ノウハウと実績を持った専門のサポートチームが必要であり、まずは、体制が確立している首都圏、関西圏に集中して事業を推進する」（後藤執行役員）としている。

　さらに、出版、広告、印刷業向けに四半期ごとに開催しているプライベートイベント「PAPIT Forum」においても、混在環境でのソリューション提案を行うなど、イベントを通じた訴求を活発化させる。

　同社におけるアップル製品の売り上げ構成比率は公表されていないが、わずか数％規模にとどまるとみられる。今後、提案を加速することで、マック関連ビジネスの拡大に弾みをつける。

　マックのノウハウを持つSIerにとっては、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性がある領域ともいえ、大塚商会では、付加価値ビジネスのひとつと捉えている。