その他
マイクロソフト シニア向け支援体制を加速
2007/11/26 21:10
週刊BCN 2007年11月26日vol.1213掲載
徳島県上勝町での試み ICT活用による過疎地域活性策を模索
自治体首長の理解が不可欠
マイクロソフトと徳島県上勝町は、ICT利活用による地域振興および、情報通信機器の利活用の促進などに関して協業を発表した。マイクロソフトが過疎地の自治体と提携するのは初めてのこと。マイクロソフトが協業で狙うものとは果たして何か?そして、同時に推進するシニア向けのICT利活用促進策とはどんなものなのか。(大河原克行●取材/文)
マイクロソフトは現在、日本における中期計画「PLAN─J」に取り組んでいる。
今年7月から始まった新年度が、この計画の最終年度。PLAN─Jでは、誰もがITの恩恵を享受できる社会の実現を支援する「デジタルインクルージョン」を掲げて、NPO、教育分野、中小企業、政府を4つの注力分野として、それに向けた投資を強化してきた。そして、最終年度に突入したところで、5本目の柱として、新たに「アクティブシニア」という項目を追加した。
マイクロソフトのダレン・ヒューストン社長は、「世界の中でも、日本は少子高齢化が進んでいる国。過疎・高齢化の課題に直面している自治体は少なくない。アクティブシニアがICTを使いこなし、デジタル時代を、豊かに、生き甲斐をもって暮らせることを目指す」として、11月9日、アクティブシニア推進計画を発表。気づき、相談と購入、学び、質問、活用、発表と交流というサイクルを通じた各種施策を用意して、全国規模でのシニアのICT利活用支援を行う計画を明らかにした。
■高齢・過疎の町と業務提携する意味
これに先立つこと1か月前。10月9日、マイクロソフトは、徳島県上勝町と協業することを発表した。
ここでは、ICT利活用による地域振興、過疎地域における自立的なICT利活用促進の運用、住民のICTリテラシー向上などを掲げ、過疎・少子高齢化という問題を抱える自治体が、ICTの利活用により、地域を活性化することを支援。これを「上勝モデル」としてパッケージ化、日本国内のみならず、全世界に広く応用することも考えている。ここでも、キーワードは、シニア層のICT利活用ということになる。
実は、マイクロソフトが上勝町に注目したのには理由がある。
上勝町は、徳島空港から車で1時間半ほどかかる山地にあり、人口約2000人、高齢化率(65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合)が48%という過疎・高齢の課題を抱える町である。
だが、この町では、86%の世帯に光ファイバーが敷設されており、第3セクターの株式会社いろどりを中心に、平均年齢70歳の190人の高齢者がITを活用し、木の葉や草花を、料理の「つまもの」として販売している。その売上高は年間2億6000万円に及ぶ。
1992年から防災無線FAXを活用し、農家へ「つもまの」の受注情報をFAXで送信。それを受けた農家が、JAに電話連絡し、受注する仕組みを構築した。99年からはパソコンを導入して、生産者、営業組織、物流拠点、市場を結ぶ情報ネットワークを整備し、今年4月からは光ファイバーを利用して運用を開始した。
上勝町の笠松和市町長は、「道路を二車線化したり高速道路を新たに建設しても、移動に時間と費用がかかることには変わりはない。だが、光ファイバーの敷設によって、情報の入手や、ネットを活用した事業を行ううえでの時間やコストでは、都市部との格差がなくなる。過疎地にいながらも、全国展開を行うことができる体制づくりは、行政にとっても大きな課題といえる」と、町として情報化に取り組んできた理由を語る。
シニア層がICTを活用し、町全体を活性化した先進的事例といえるのだ。
ダレン・ヒューストン社長は、「上勝町の取り組みは、ICTを活用して、いかに地域を変化させることができるかの好例。この事例を他の地域にも展開することで、社会にも貢献できるだろう」とみている。
実は、マイクロソフトは、2年ほど前から、上勝町に対する支援を行ってきた。光ファイバーの敷設計画が浮上したのに合わせて、パソコンの導入、運用形態について支援。住民100人を対象にしたパソコン講座も実施してきた。今回の提携は、その延長線上といえる。
■PCを使いこなせる教育体制の整備を
しかし、課題がないわけではない。今後、上勝町のすべての世帯でパソコンを利用するとしたら、教育体制およびヘルプデスク機能を充実させていかなければならない。また、マイクロソフトが上勝モデルを横展開するうえでは、自治体におけるICT利活用の旗振り役を果たす人材の確保や、自治体首長などの深い理解を得ることが必要だが、その壁を乗り越えられるかどうか。
マイクロソフトは、シニアのパソコン利活用促進に向けて、自治体、NPO、個人、パートナーなどを巻き込んで、いくつかの角度からアプローチを開始した。PLAN─Jとしての期間は、残り1年を切ったが、なによりも大切なのは、PLAN─J終了後も、継続的な支援体制を構築する点にある。すでに、マイクロソフトは、そこまで視野に入れているようだ。中長期的に、パートナーを巻き込んだ継続的な取り組みに発展していくかどうか注目したい。
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