“見える化”で品質向上図る

標準化によりコストを削減

　富士通製のメインフレームやサーバー、ストレージなどの生産拠点である富士通ITプロダクツ（FJIT）では、生産革新を実施している。問題の“見える化”で品質向上を図るとともに、標準化によってコストを徹底的に削減する。ハードウェアの価格下落が続くなか、効率的な生産を実現することによって富士通グループ全体の利益確保につなげる姿を見ることができる。（佐相彰彦●取材／文）

■04年から取り組む　トヨタ方式を採用

　FJITが生産革新に取り組んだのは04年から。製造工程の最適管理に向け、トヨタ自動車の生産方式を応用している。

　そのため、工場内では各プロダクトの製造工程で、さまざまな工夫を凝らしている。目立つのは、部材欠品や作業状況などの情報を伝達する方法だ。トヨタ方式として知られる「かんばん方式」を採用している。「かんばん」として一般的なプレートを使うだけでなく、プレートの代わりにピンポン球を利用して工場内に設置したエアシュートを通じた情報伝達を行い、作業効率化を図っている。また、トラブルを迅速処理するため各プロダクトの製造ラインに「あんどん」と呼ぶランプを設置。作業中に異常が起こった際にランプが点灯する仕組みだ。

　人の手による製造については、プロダクトやスペースに応じた作業を行っている。基本的に、小型機器が流れ作業によるライン生産、大型機器がセル方式を採用している。ほかにも、組み立て手順が複雑な機器に関してはRFIDシステムを導入。作業手順を示すRFIDの埋め込まれたリストバンドを作業員が装着することで、ミスがなくなるという仕組みだ。

　工場内での作業効率化を図る一方で、管理面の標準化にも力を入れている。工場内のいたる場所に各作業を知らせる工程表を貼付。フローチャート化することで、どの部分で効率化が図れているか、時間がかかる工程はどこなのかを把握している。これにより、工程数の大幅な削減につながっている。例えばある大型機器に関して、200種類以上あった工程数を3分の1程度に減らした実績があるという。ほかには、現場サイドの声を反映する取り組みも行っている。「提案システム」という制度で、日頃の作業で気づいたアイデアを集計し、最適な作業方法を模索・研究しているのだ。

■効率よく高品質な生産　社員の意欲も高める

　生産革新を追求しているのは、「品質の高い製品を効率よく生産できるようにする」（高田正憲社長）ことが最大の狙いだ。もともとFJITは、各地域に点在していた工場の集約を目的として02年に設立された。だが、集約したことで生産コストが大幅に下がったわけではない。だからといって、人員削減が良策ともいえない。そこで、「工場内の生産を抜本的に変えることが最適と判断した」としている。

　社員のモチベーション向上策について高田社長は、「1日平均の生産目標が未達だったり、トラブル発生などは、現場ではなく（私を含めた）管理している側に問題がある。そのため、責任はすべて管理する側に持たせるようにした」という。さらには、当たり前のことを当たり前に行うため、良い意味で指摘できる環境作りに向けて「おせっかい活動」と呼ばれる活動を実施。受け身体質や無責任体質、不適切指導や表面だけの対策を排除している。

　生産革新を実行したことにより、相当な成果を得たようだ。「（約3年間で）30％のコスト削減を実現した」のにとどまらず、「大量生産の時期にも人員を増やさずに対応できるようになった」と誇らしげだ。また、13拠点あった外部スペースを1拠点に減らし、3か所の自社工場を2か所に集約することで、「年間1億円の削減を図ることができた」としている。

　設立初年度の売上高は700億円強。「今年度も700億円前後の見通し」で、設立以来、横ばいで推移している。売り上げの拡大については、「製造拠点なので、販売面での強化策は持ち合わせていない」と打ち明ける。こういった点からも、徹底的なコスト削減で利益を確保していることがうかがえる。