メディア保存でDRや内部統制に
データを長期間にわたって保存しておくアーカイブの需要が高まっている。ユーザー企業の間で、ディザスタリカバリ(DR、災害対策)や内部統制への対応をしておかなければならないという機運が高まり、社内の重要データをテープやCD/DVDなど別のメディアに保存する動きが盛んになっていることの現われだ。こうした動きは、ITベンダーにとって追い風になる。さまざまな角度から提案することにより、製品・サービスの販売を伸ばすことができるからだ。 テープへの投資意欲が高い ユーザーは継続利用の方向へ |
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調査会社IDC Japanは、国内のユーザー企業によるテープストレージ利用に関する「2008年国内テープストレージ利用実態調査」を発表した。同調査は、バックアップにテープストレージを利用している国内企業の利用実態と今後の投資意向に関するもので、テープストレージに対する投資意欲が高いことや継続利用を求める声が多いことを表している。

同調査によれば、対象企業649社のうち449社(69.2%)が、自社のバックアップ運用でテープを利用し続ける意向が示されている。テープを利用し続ける理由については、「テープは災害対策で必要」という回答が最も多い。IDC Japanでは、ユーザー企業は時間の短縮や作業の簡素化のためにディスクシステムをバックアップに使用する一方で、災害対策の観点で完全にオフライン管理できるテープを利用し続ける意向が高いとみている。
また、バックアップ関連の調査項目では、企業規模でバックアップの運用状況やバックアップの課題、投資姿勢などに差がある実態が浮き彫りになっている。このため、テープストレージベンダーが市場を拡大させるには、各ユーザー企業でのバックアップのやり方を把握して、その利用実態に応じた提案や製品戦略をとることが重要と指摘している。
投資意欲については、5割強の企業が前年より増やしたいと回答している。ただ、投資金額の増加率は決して高いとはいえず、全体の3割が前年比横ばいとしている。こうした実態についてIDC Japanは、限られた予算内でバックアップ運用の整備や改善を行おうとするユーザー企業が多いためと分析している。
上記調査から浮かび上がってくるのは、ユーザー企業の多くは依然としてテープメディアへのデータ移行について高いニーズを維持しているということだ。このことは、テープストレージの需要はまだまだ市場に眠っているということを意味する。
また、「別メディアへのデータ移行で保存する」という観点でいえば、CD/DVD複製装置のデュプリケーターを提案するのも一つの手だ。最近では、特定業種という既存の事業領域から一般オフィスを対象として拡販を図ろうとする動きがデュプリケーター関連メーカーにみられる。この動きは、災害対策に加えて、データをきちんと保管しておくという内部統制ニーズに対応するものといえそうだ。また、オフィス内のローカル環境の専用サーバーに蓄積したデータをバックアップする用途で提案。これにより、ユーザー企業にとってはIT管理者の手間を省けるほか、サーバー容量の有効活用によるコスト削減が可能になるわけだ。
一般オフィスへの提案では、運用管理ソフトウェアとの連動による詳細なデータ管理が行えることや、メインフレームなどレガシーシステムのデータ保存用にデュプリケーターを活用することで保守費用の削減を訴求できるほか、オープン系への提案にも結びつきそうだ。
ほかにも、映像関連や医療、教育関連など、これまで需要を掘り起こせなかった業界で用途提案を進めることで事業拡大を図るITベンダーが出てきている。
国内テープストレージ市場は、年を追うごとに縮小するとの見方が強い。デュプリケーターに関しては、これまで特定業種での活用がメインだったことから市場規模が小さいといわれている。しかし、提案次第で需要を掘り起こせることからも、「別メディアへのデータ移行で保存する」ことを切り口として、データアーカイブ関連事業を手がけることで、ITベンダーにとってはビジネスチャンスをつかむ可能性があることになる。