日本IBM(橋本孝之社長)は、グループウェア製品などの販売を手がける「ロータス事業」で中堅・中小企業(SMB)を掘り起こすことに力を入れている。製品面でハードウェアを組み合わせたアプライアンスを市場投入し、販売網の強化で他社からの乗り換えを促進していく方針だ。
今年7月、日本IBMのロータス事業部でトップが交代し、マーケティングを担当していた三浦美穂氏が事業部長に就任した。三浦事業部長は、「マーケティングに携わった経験からSMBの実状をいえば、メールなどコラボレーションに関連するものが管理できないという声が挙がっている。こうしたSMBの悩みを解決することが重要」としている。そこで、このほど新しいコラボレーション・ソフトウェア「IBM Lotus Foundations」を市場投入したほか、専用OS搭載のサーバー「IBM Lotus Foundations サーバー1.1」も発売。最短30分のセットアップが可能という導入の簡便性を訴えたアプライアンスに仕上げている。

09年7月に就任した三浦美穂・ロータス事業部長
日本IBMのロータス事業部では、SMB領域を「新規市場」と捉えている。大企業をユーザーとして獲得したノウハウをベースにして、SMB市場での事業拡大を図ろうとしているのだ。ただ、これまで課題だったのが、SMBに適した製品を揃えていなかったこと。三浦事業部長は、「最近では、SaaSなどサービス型モデルがSMBで主流になるとの見方が強いが、まだまだハードウェアとソフトウェアを組み合わせたソリューションを導入する傾向が強い」という。米国では、ロータス事業でSaaSサービスの提供を開始しているが、「日本でのニーズを踏まえて、まずはハードを絡めたビジネスを継続していく」と、専用サーバーの発売をアピールする。
日本IBMがSMBをターゲットに、しかもハード販売を意識した戦略を進めるのは、販売代理店とのパートナーシップを深めていきたいとの考えがあるからだ。ロータス事業では現在、販売代理店が100社以上に達しており、「販売網は整っている」と自信をみせる。そんななか、SMBを顧客として獲得するうえでSaaSだけに絞った戦略では開拓できないと判断したとみられる。アプライアンスやパッケージソフトをSMBに普及させた段階で、次のステップとしてSMB向けSaaS事業を展開するつもりのようだ。
ただ、課題は販社に対する支援制度の拡充である。SMB市場で競合のサイボウズなどを担ぐ販社も存在する。ディストリビュータやSIerなどでサイボウズ製品の販売に力を入れているのは、低価格で導入しやすいとの声がユーザー企業から挙がっているためだ。こうした観点からすると、「Lotus Foundations」は1ユーザー2万1400円(税抜)、サーバー単位で3万2800円(同)などに設定されているが、ハードは25万円(同)と少し高めだ。「ロータス製品を多く売ってもらうように販売パートナーを振り向かせたい」だけに、将来的なSaaS提供も踏まえ、インセンティブなどを含めたプログラムなどを改めて策定する必要がありそうだ。(佐相彰彦)