日本IBM製品の有力ディストリビュータ、イグアス(矢花達也社長)が、新ビジネスの創出に力を注ぎ始めた。IAサーバーやPC、各業務アプリソフトなどの一般的なIT製品の卸販売だけでなく、非IT系のユニークな商品の取り扱いを増やしているのだ。11月に取り扱いを開始したのは、3次元データを元に自動で立体模型を造形する「3Dモデラー」と呼ばれる専用機器。「取り扱い商品の増強・多様化は重点ポイント」(矢花社長)として、「IT」にとらわれずに取扱商品を増やすことで、卸販売事業を伸ばしていく。
イグアスは、日本ビジネスコンピューター(JBCC)などを傘下に置くJBCCホールディングスのグループ会社で、日本IBM製品の販売に強い有力ディストリビュータ。日本IBM製IAサーバー「System x」などのハードウェアでは国内トップクラスの販売力を持っている。取り扱い商品は約15万点におよび、イグアスから商品を購入するITベンダー数は515社存在する。

イグアスが販売を始める3Dモデラー製品「PROJET」の開発元3Dシステムズのミケレバイスプレジデント(右)とイグアスの矢花社長が握手
矢花達也社長は、今後の経営戦略を「ディストリビューション事業の柱は、イグアスから製品を購入するパートナー企業と、販売する商品点数を増やすことに尽きる。パートナーはある程度集まったと考えているので、取り扱い商品数の拡充に力を入れる」と説明。IT製品に限らず、商品を集める方針を示した。
今年度スタートの4月1日に新規事業部を設立し、取り扱い商品数の拡充に着手。これまで国内で発売されていないビジネスバッグや電動立ち乗り二輪車「セグウェイ」などの取り扱いを始めるなど、従来のIT系ディストリビュータでは扱わないような商品を増やしている。
11月からは「3Dモデラー」という立体模型を自動製造する専用装置の取り扱いを開始。グローバルシェアトップの米3Dシステムズの「PROJET」4機種を発売した。「PROJET」は事実上、日本では初めて販売する製品で、イグアスは中堅規模以下の製造業や建築事務所、デザイン会社、医療機関を主なターゲットに拡販する。販売目標は今年度(2010年3月期)50台、来年度200台。
矢花社長は「『3Dモデラー』は、一部の超大手企業が活用している程度で、まだ市場が形成されていない分野。それだけに、やってみないとわからないというのが正直なところだが、ポテンシャルは数万台規模であると思っている」と鼻息を荒くする。イグアスは、今後3Dシステムズがアジア地域で販売予定の100万円前後の新商品も取り扱う予定で、正面から拡販に取り組む。
景気後退の影響でユーザー企業のIT投資は先細りするばかり。とくに製品販売は苦しく、「IAサーバーの販売台数は今年度45万台規模に落ち込む可能性が高い」といわれるほどだ。ディストリビューションという付加価値をつけにくいビジネスモデルで、従来はもっていなかった製品を取り扱うことで販売額を伸ばし、不況を乗り切ろうとしている。(木村剛士)