ネットワンシステムズ(吉野孝行社長)では、UC(ユニファイドコミュニケーション)関連事業が好調に推移している。現段階でユーザー企業数は大企業を中心に40社程度。売上規模は40~50億円に達している。不況をきっかけとする業務改善の一環として導入ニーズが高まっているのが好調の要因。今後は、ユーザー企業のすそ野が広がると判断しており、さまざまな切り口で案件獲得に力を注ぐ。売上規模については、近い将来に現状の2~3倍に引き上げる方針だ。
ネットワンがUC関連事業に着手したのは2005年から06年にかけて。07年に専門組織を設置したことで軌道に乗り始めた。同事業は年を追うごとに売上高が増加。大塚浩司・取締役エンタープライズ事業グループ統括は、「事業着手については、ほかのインテグレータと比べ、やや出遅れた感があった。しかし、専門組織を設置し、今ではITベンダーとして国内最大規模の約80人という専門要員を率いる組織となり、体制が整った」と自信をみせる。なお、大塚取締役は組織の設置時に責任者として就任、今はエンタープライズ領域を統括する立場からUC関連を軸に事業拡大の指揮を執っている。

「UC普及の機運が高まってきた」とアピールする大塚浩司取締役
ユーザー企業への導入例の多くが、シスコシステムズ製のUC関連機器。大企業を中心に40社程度に導入した。この実績は、同社がシスコ製品に関する技術ノウハウをもっていることの裏づけだ。しかも、設計から構築、保守、運用までを専任のエンジニアが一貫して携わっている点が寄与しているようだ。サポート面では、サービス関連拠点「XOC(エキスパートオペレーションセンター)」で監視や運用などを手がけている。
加えて、「ユーザー企業がUCを導入するにあたり、重要なのはワークスタイルを変革できるかどうかであるため、コンサルティング要員も揃えている」としている。ユーザーになり得る企業が抱える課題は、「社員数の減少に伴って、仕事量が増えている。そんな状況だからこそ、社内のコミュニケーションプロセスを改善しなければならない」のが実状。また、昨年秋からの不況により、「業務を効率的にこなし、しかもコストを削減しなければならないという課題が浮上している」という。企業が頭を悩ませていることをコンサルティングで情報収集している点が同社の強みだ。
よく導入されるシステムは、多くの拠点で映像を通じてコミュニケーションが図れるテレプレゼンス会議システムだという。シスコ製の同システムは1000万円程度の価格で高額といわれているが、「長期的なTCO(費用対効果)で導入する傾向が高い」ようだ。業界については、「金融や流通などが多い」という。ただ、「景気が回復すれば、製造業が工場間で活用したいという声が挙がっているため、新規顧客の獲得が期待できる」としている。
ユーザー層の広がりについては、「電話をIP化している企業は、当社のUC関連以外の顧客で2割程度と、実は少ない。まずは通話料のコスト削減という面からIP化を勧め、IP化したのならばメリットを高めるうえでUCという提案を行う」としている。確かに、まだIP化を導入していない企業が多く、とくに中堅・中小企業(SMB)市場ではIP化の需要が眠っているといえそうだ。そういった点で、ネットワンではUC事業拡大の可能性を秘めていると判断しているのだ。(佐相彰彦)