経済産業省の2010年度情報政策関連施策・予算が明らかになった。「エコ」「中小企業・地域活性化支援」「先端IT国家の推進」がポイントで、09年度に比べて約35億円積み増した430億円規模の予算を国会に要求する予定だ。来年度、新たに始める新規事業を中心に、主な施策を解説する。注目はクラウドコンピューティング関連施策だ。
クラウドシステムの普及促進姿勢、鮮明に
2010年度の情報政策関連予算案の骨子は三つで、「エコ」「中小企業支援」「先端IT国家の推進」。具体的な内容は右上図に示した通りだ。そのなかでも、来年度に新規で予算要求する事業で注目点が二つある。「次世代高信頼・省エネ型IT基盤技術開発・実証事業」(予算要求額8.6億円)と、「中小企業システム基盤開発環境整備事業」(同7.3億円)だ。
前者では、信頼性と既存システムとの互換性を保ちながら、省エネも意識したクラウドコンピューティングの調査研究・開発、実証実験を手がける。経産省はこの事業で、「クラウドの普及を目指し、データセンターへのサーバー集積化も促す」とし、クラウドの普及を後押しする姿勢を鮮明にしている。
一方、後者の事業では、中小のソフト開発企業が競争力を高めるための開発手法の標準化を進める。企業の業務システムと組み込みソフトの開発で、コンソーシアムを組織して開発手法の標準化を進める。汎用的な分野には標準化した手法を取り入れることで、各中小のソフトハウスが、効率的に信頼性の高いソフトを開発できるようにする。また、成果物を国際標準として提案することで、組み込みソフト関連産業での国際競争力の強化も狙う。
このほか、継続する主な事業としては、IT人材育成力強化(12億2000万円)、情報セキュリティ技術開発(28億3000万円)、各地域の中小企業のIT化を進める「地域経済イノベーション」(18億1000万円)がある。既存事業で大幅に削減されたものは見当たらず、二つの新規事業以外は「前年踏襲」の色が濃い。
また、中小企業のIT利用活性化策として、IT関連の税制改正がある。資本金1億円以下の中小企業に対し、今年度末で終了する「情報基盤強化税制」で対象にしているIT機器について、7%の税額控除または30%の特別償却を来年度から2年間可能にする。中小企業にとっては、事実上「情報基盤強化税制」の延長となる。
今回の予算案で注目すべきは、クラウドの普及促進を新規で要求する点だろう。官公庁もクラウドを効率的なITの利用方法とみており、自治体や官公庁での利用ほか、企業でのクラウド採用も促していく予定だ。経産省もクラウドに来年度から本気で向き合おうとしている。(木村剛士)