米IBMでISVとの協業や支援を手がける「ISV&デベロッパー事業推進」でディレクターを務めるデーブ・ミッチェル氏が来日した。「IBM Smarter Planet」というコンセプトのもと、クラウドビジネスで徹底攻勢をかける米IBMは、SaaSの今をどう捉え、どのようなグローバルレベルのISV戦略を描いているか。同氏に聞いた。
聞き手●木村剛士
「流通モデルは大きく変わるが、チャンスは大きい」
──クラウドがITの利用形態として浸透するのは確実。そのなかで、IBMはグローバルでどのようにISVを支援するのか。  |
| デーブ・ミッチェルディレクター |
ミッチェル ISVの関心が最も高いのは、「クラウド基盤でどのように自社のソフトウェアを効率的に動作させるか」にある。ISVは今、クラウドへの移植を重点テーマに掲げている。そのなかで、IBMはさまざまな移行支援プログラムを手がけている。SaaSのパートナー制度では、「Develop(開発)」「Deliver(販売)」「Go to Market(マーケティング)」という三つの観点で魅力的な協業プログラムを用意している。
また、クラウド・コンピューティングを重要な要素としている「Smarter planet」では、IBMは金融や通信事業者など九つの業種・業界を、まずはターゲットとして品揃えを強化している。定めたエリアの業種に精通したISVに対しては、専用プログラムを設けて個別プランを提示し、協業を加速させている。
──米国のISVは、SaaSやクラウドにどんな姿勢で取り組んでいるのか。
ミッチェル およそ65%のISVがSaaSに取り組んでいるという認識だ。日本よりも取り組み始めた時期は早い。日本はアジア諸国のなかで、いちばんSaaSに対する施策が盛んな国だが、米国と比べれば1年から1年半ほど遅れている。ただ、今後はこの差が埋まるはず。ISVが競争力をもつためには、SaaSはどの国でも必要だからだ。
──SaaSになれば、ソフトの商流も変わるはずだが。
ミッチェル 米国でのSaaS提供形態は、基本的にユーザーへのダイレクトが多い。従来のようなソフトの流通形態は減っていくことになるだろう。
──となると、ソフトをハードと組み合わせてシステム構築して納入するSIerはどうなるのか。
ミッチェル 「ソフトの実装ビジネス」は徐々に減っていくだろう。しかし、クラウドやSaaSは新たなビジネスチャンスも生む。例えば、サービスのカスタマイズやトレーニングが考えられる。加えて、実装ビジネスで培ったソフトのカスタマイズノウハウをSaaSとして提供することもあり得るだろう。縮むビジネスもあるかもしれないが、それよりも新たに生まれるチャンスのほうが大きいはずだ。