中国では今、CG(コンピュータグラフィック)の制作需要が急速に拡大している。ITホールディングスグループのソランは、業務ソフトウェアのオフショア開発のみならず、こうしたCG系の需要にも早くから着目。中国天津市の現地法人で、日本からのCG制作の受託ビジネスの拡大に力を入れる。このビジネスを担う天津ソランデジタルソフトウェア(河内龍総経理)のCG関連の今年度(2010年12月期)売上高は、前年度比約2倍を見込むなど、ビジネスが急成長する模様だ。
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| 河内龍総経理 |
CGのオフショア制作案件は、日本からのアミューズメントやゲーム、アニメなどの受注が多くを占める。業務用ソフトのオフショア開発は、北京にある北京ソランコンピュータが主に手がけているのに対し、天津ではCG制作をメインに手がける。天津ソランは、需要拡大に伴い、動員可能な人員数を現状の約70人から、今期末までに100人に増やす計画だ。
また、ビジネスの中身も大きく変貌しようとしている。これまでは、CG事業での日本からのオフショア開発が売り上げの9割余りを占めたが、近年では中国国内でのCG制作案件の受注が増えているのだ。中国では、ネットゲームの人気が高く、次々と新しいネットゲームコンテンツがCGで制作されている。中国のインターネット人口は09年に3億人を超えたとみられており、ここ5年ほどで3倍に増えた。ネットゲームユーザーも増加し、「ゲームのクオリティに対する要求も日増しに高くなっている」(河内総経理)と話す。
日本の厳しい品質要求に応えてきた同社の技術力は、中国ネットゲーム大手も高く評価している。天津ソランによれば、「およそ100を超えるネットゲーム会社があり、うち何社かは上場企業まで育っている」とのこと。今期は品質重視の地場系大手ゲーム会社からの受注比率を倍増させる。日本からの受注も増える見込みで、今期のCG事業全体の売上高は前年度比2倍を目指す。
ただ、慢性的な人材不足という課題もある。天津ソランは、06年の創業時から地場の教育機関と連携したCG人材の育成事業を手がけているものの、まだ十分ではない。だが、朗報もある。中国では、国の方針として世界で通用するアニメ・ゲーム人材の育成を00年後半頃から本格化。「今年あたりからアニメ・ゲームの教育を受けた人材が大学を卒業する時期に差し掛かる」。こうした人材を積極的に取り込み、プロとして育成する教育事業も、並行して伸ばすことで人材不足を緩和させ、ビジネス拡大につなげる。
河内総経理は、「いずれは当社独自に企画したアニメ・ゲームを制作できる実力をつける」と、将来構想を語っている。(安藤章司)

CG制作現場の様子。優秀な人材が多数揃う