情報サービス産業協会(JISA)と中国ソフトウェア産業協会(CSIA)が推進母体となって、9月14日、「日中情報サービス産業懇談会」が中国西安市で開催される。今年で第14回となる懇談会では、中国でのオフショアソフト開発に加えて、成長目覚ましい中国のIT需要に関心が集まるものとみられる。日本の情報サービス業界が相対する中国ソフトウェア業界とは、どの程度の規模なのか。週刊BCNが事前に入手した資料をもとに検証した。
中国ソフトウェア産業協会(CSIA)の集計によれば、中国における2009年の情報サービス業の売り上げ規模は、前年比25.6%増の9513億元(約12兆4000億円)と大幅に伸びた。この5年で、実に3.4倍余りに成長した勘定だ。一方、日本の情報サービス業の今年6月の売上高は、前年同月比4.9%減と13か月連続で減少。経済産業省の特定サービス産業動態統計をもとにJISAで集計したものだ。リーマン・ショックの影響から脱し、回復に向かうことが望まれながらも、数字上は依然として厳しい状況にある。
日本の情報サービス産業の市場規模は、同業者間取引を除いた真水で12兆円規模と見られている。中国は多層的な下請け構造がさほど形成されておらず、かつGDP規模で日本を追い抜く勢いであることから、「日中の情報サービス業の規模感は、大差ないレベルに達しつつある」(日本の大手SIer幹部)との見方が有力だ。また、中国は09年8月頃から金融危機による成長鈍化が止まり、いち早く回復基調を取り戻した。中国に進出する日系SIer幹部は、「今後の伸びに期待大」と、成長を続ける巨大IT市場に熱い視線を送る。
内訳は、ソフトウェア技術サービスが前年比31.4%の大幅増。ほかソフトウェア製品は26.3%増、SIは23.7%増、組み込みソフトは22.1%増だった(構成比は図2を参照)。日本では、落ち込みが極めて大きい製造業向けの組み込みソフトでさえ、中国では前年比20%余りの増加を示す。その前の年に比べて伸びが鈍ったとはいうものの、“世界の工場”と称される中国製造業の勢いを感じさせる。
日本の情報サービスの停滞は、中国でのオフショア開発に深刻な影響を与えている。日本のオフショア開発金額の8割余りが中国で占められ、また中国の海外向けアウトソーシング開発の60%近くが日本向けだ。日本からの発注量の伸びが鈍っているとはいえ、日中の情報サービス産業はもはや不可分の深い関係にある。懇談会では、勢いよく伸びる中国のIT需要の取り込みや、オフショア開発の回復策などについて、議論がより深まることが期待されている。(安藤章司)