日立情報システムズ(原巖社長)は、クラウドが本格的な普及期を迎えるなかで、同社の「プール化構想」のうち「サービスプール」事業に位置づけている仮想化/クラウドサービスをリニューアルし、業種別SaaSなどを展開する「SaaSコンシェルジュサービス」など、四つのメニューに整理統合した。同社は、中国でSaaS展開することを計画している。
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| 原巖社長 |
日立情報システムズは、2006年頃、ユーザーがサービスを必要な時に必要なだけ提供する「プール化構想」によって、クラウドサービスが登場するよりも早い段階で「所有から利用へ」を標榜していた。「プール化構想」は、「インフラプール(PaaS、IaaS)」「サービスプール(SaaS)」「情報プール」の大きく三つのレイヤーで構成する。とくに「情報プール」は、クラウドにはない、日立情報独自の情報の高付加価値化サービスだ。
日立情報では、このほどサービスプールに位置づけている仮想化/クラウドソリューションを四つのメニューに刷新。そのなかの一つ、業種特化型SaaSや業種共通SaaS、SaaS連携サービスを提供する「SaaSコンシェルジュサービス」では複数のSaaSを連携させることで、顧客のビジネスプロセスをサポートする。業種・業態に対応した各種業種・業務アプリケーションとして、SFAやCRMなどのフロントオフィス系ソリューション、財務会計・人事給与、バックオフィス系のソリューション、また業務別のアプリケーションを自社ないし他社の製品を組み合わせて提供するとともに、顧客の業種・業態の標準テンプレートを用意して最低限のカスタマイズに済ませる。業種別SEがSaaSコンシェルジュとして最適な構成を提案するとともに、SaaSの連携基盤を組み込んで自動化することで、ZLT(Zero Lead Time)でサービスの提供を目指す。
古田茂雄常務は「国内ではなく、中国のSMB企業に対して、先行して展開することも案として考えている。その際にはSaaSテンプレートという格好で提供するのではなく、まず生産管理のアプリケーションを販売していく」(古田常務)と、計画を話す。拡販については「中国の地方政府などと連携し、地元業界団体に対してSaaS利用を働きかけたい。また、国内で展開する場合も業界団体に提案し、共同利用の形も狙いたい」(古田常務)と構想を語る。
「半年、1年をかけて顧客に提案するやり方ではなく、ノンカスタマイズによるZLTでサービスがすぐ使えないと、利用してもらえなくなる」と、原社長は危機感をあらわにする。開発単価が下がるなかで、オフショア開発なども5、6年ほど前から取り組んでいるというが、限界を迎えているとみている。クラウドが進展し、生き残り競争が激化しているなか、日立情報では2011年にプール化事業を全売上高の3割にまで引き上げるとともに、今後はアジア中心にSMB市場開拓を進め、海外売上比率を2015年に35%に拡大することを計画している。国内競争もさることながら、多くの国内IT企業がアジアへ熱いまなざしを向けており、厳しい競争が待ち受けている。(鍋島蓉子)