データセンター、システムのエネルギー効率化を促進する国際的なコンソーシアム「グリーン・グリッド」は日本で初の「グリーン・グリッド データセンター・アワード」を開催、受賞企業を発表した。グリーン・グリッドが推奨している指標を用いた、エネルギー効率化に対する取り組み、改善活動などを評価するもので、日立製作所が最優秀賞を受賞した。(取材・文/鍋島蓉子)
授賞の対象として3社を選出
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| グリーン・グリッド、エグゼクティブディレクターのローレンス・バータル氏 |
「グリーン・グリッド データセンター・アワード」は、2009年に初めてヨーロッパで開催されたイベントである。英国のデータセンター関連の調査やイベント会社DatacenterDynamics社の行事の一環として創設されたものだ。グリーン・グリッドのローレンス・バータル・エグゼクティブディレクターは「日本はデータセンターの取り組みに先進性があるので、ぜひ日本でも開催したいと強く思った」と経緯を話す。
今回はグリーン・グリッドとアライアンスを組んでいる国内の「グリーンIT推進協議会」「日本データセンター協会」の2団体も審査に参加した。アワードの対象となるのは既存のデータセンターである。グリーン・グリッドが提唱しているPUE(Power Usage Effectiveness=電力使用効率)、DCiE(Data Center infrastructure Efficiency=データセンター施設の電力効率)などの指標を用いたエネルギー効率化に向けて継続的に行っている取り組みや、最低6か月以上のエネルギー効率の改善活動を実行していることがエントリの条件となっている。
評価基準は大きく5項目。一つはPUE/DCiEを活用して、エネルギー効率改善活動の前後の定量的な数字で表されていること。二つ目は改善の対象を特定し、目標を設定すること。三つ目はファシリティ、ハードウェア、電力効率などの要因から構成されるデータセンター環境にいて継続的な活動を行っていること。四つ目は、継続的な改善活動において、指標をもとに定量化し、それを報告し、評価されていること。五つ目は、活動がほかのデータセンター事業者にどれほど良好な影響を及ぼすのかを評価する。応募期間は7月1日~9月17日、応募総数は8社。そのうち、最優秀賞に日立製作所、優秀賞に富士通、特別賞にIDCフロンティアの3社が選ばれた。
CoolCenter50を掲げた日立に栄冠
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| 最優秀賞を受賞した日立製作所の渡部芳邦事業部長 |
最優秀賞の日立製作所は、5年間でデータセンターの消費電力量を最大50%削減する環境戦略を掲げている。リアルタイムの電力消費量管理、PUEレポート、エアフローの「見える化」、外気温に連動した制御システムを導入するなど、ユニークな取り組みが評価された。日立製作所の情報・通信システム社ITサービス事業部の渡部芳邦事業部長は「2007年に『CoolCenter50(クールセンター50)』というプロジェクトを立ち上げた。2007年から5年間かけて電力消費量を50%削減するという取り組みだが、2010年ほぼ予定通りに進んでいる。今後も継続的に取り組んでいきたい」とコメントした。
優秀賞の富士通は、社内施設エンジニアリング部門、空調技術開発部門による横断的な活動として取り組んできた。IT機器と空調設備の両輪でエネルギー効率化に取り組み、各地のデータセンターのエネルギー使用状況をPUEで算出、グラフ化し、即効性のある改善活動を行っていることが受賞理由とされた。
特別賞に選ばれたIDCフロンティアは、九州で2年前に開設した、商用データセンター「アジアン・フロンティア」での取り組みが評価された。大規模な外気空調システムの導入や、冷熱分離、送風抵抗の極小化といった先進的なベストプラクティスの投入によって、大きな成果を上げたという。
グリーン・グリッドは2007年に米国で設立され、日本では2008年に活動を開始した。ユーザー視点による有益な規範、指標の定義づけ、効率化の指標の改善に必要な基準、測定手法、ベストプラクティスの策定と技術開発を行う。また、エネルギー効率化の基準、プロセス、測定手法、テクノロジーの適用の促進をグローバルでのミッションとしている。