その他
センター争奪戦、激しさ増す 情報ハブ戦略を打ち出せ
2010/11/18 14:53
週刊BCN 2010年11月15日vol.1358掲載
「情報ハブ・データセンター(DC)」を巡る競争が激化している。クラウドコンピューティングによって世界の情報がDCに集約されつつある現在、どの国や地域がこの情報のハブ(hub)を握るのか、綱引きが繰り広げられているのだ。航空運輸では、韓国仁川空港が他国に先駆けてハブ空港としての地位を確立。アジアの空の玄関として発展したように、情報分野でもハブを握ることでクラウドビジネスを大いに伸ばすことができるとの期待が高まっている。
この10月、沖縄で開催された情報通信の国際会議「インターネット・ガバナンス・フォーラム」で、パネリストから情報ハブ・センター構想が提案された。沖縄を情報通信の特区にして、規制緩和や法的整備を進めれば、世界のクラウド需要を取り込める。EUには個人情報保護などによって域外へのむやみな情報移転を防ぐ規制があり、欧州の一部地域では“言論の自由”を保証することでより積極的に情報を呼び込もうという議論さえ出ている。
もっと身近な例を挙げれば、Googleをはじめとする検索サービスである。日本ではかつて情報を集めることが著作権に抵触するとか何とかの不毛な議論をしているうちに、いつの間にか国産検索サービスはメジャーな存在から外れてしまった。さまざまな社会問題の発生源とされ、鼻つまみ者扱いされることの多い巨大掲示板群2ちゃんねるのサーバー管理者は、早々とシンガポールに拠点を置く会社へ移った。ショッキングだった尖閣諸島(中国名=釣魚島)沖での漁船衝突ビデオが流出したYouTubeのサーバーはアメリカにある。ソニーもアジア太平洋地域の基幹業務システムをシンガポールのDCに移す。米国やシンガポールからは情報ハブ・センターになろうとする強い意欲が感じられる。
また、近年、外資系DCが次々と中国で開設されているが、この背景に国際通信の遅延問題が挙げられる。ある大手日系SIerが調べたところ、米国とのパケットロスは通常の3倍余りの約25%に達した。この遅さでは、中国国内にDCを開設しなければ中国向けの良質なサービス提供は難しい。方法はともかく、結果的に国外への情報移転を防ぐ役割も担う。
つまり、情報には“浸透圧”があり、より条件のいい場所へ国境を越えて移っていく。クラウドコンピューティングは技術のみで成り立つわけではなく、規制や法整備にも大きく左右されるということだ。日本がこうした動きに鈍感であるなら、クラウドの中心は海外へと移り、そこで情報ハブ・センターが形成されることになるだろう。米国の弁護士資格をもち、法制面に詳しいインテレクチュアルベンチャーズの加藤幹之日本総代表は、「クラウドで失敗すれば、日本は失われた20年が、失われた30年になる」と警鐘を鳴らす。今こそ世界の情報ハブ・センターになる大胆な戦略を打ち出すべきではないか。(安藤章司)
「情報ハブ・データセンター(DC)」を巡る競争が激化している。クラウドコンピューティングによって世界の情報がDCに集約されつつある現在、どの国や地域がこの情報のハブ(hub)を握るのか、綱引きが繰り広げられているのだ。航空運輸では、韓国仁川空港が他国に先駆けてハブ空港としての地位を確立。アジアの空の玄関として発展したように、情報分野でもハブを握ることでクラウドビジネスを大いに伸ばすことができるとの期待が高まっている。
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