ユーザーにとって身近な存在になりつつある中古PC。家電量販店の店頭には中古PCの陳列コーナーが設けられ、ユーザーはこれまでのパソコンオタクだけでなく、家族層にまで広がりつつある。中古PCをここまでの“商品”に育ててきたのが、PCの調達からデータ消去、卸・販売まで、一貫して手がける販売事業者だ。2社の取り組みをレポートする。
NECパーソナルプロダクツ
ファミリー層も取り込んで
「数が足りない」販売店も
NECパーソナルプロダクツは、2003年7月に、家庭向けモデルを対象とした「使用済みPCの買い取りサービス」を開始した。同年9月にはメーカー保証付き再生(中古)PC「NEC Refreshed PC」の販売を開始。2007年12月には、累計出荷台数10万台を達成している。保守サポート拠点の群馬事業所で再生作業を行い、出荷している。
調達した使用済みPCのハードディスクは、同社製の専用ソフトで3回消去(ランダムデータ/ランダムデータ/0の上書き)。マニュアルは、電子マニュアル(6か月保証モデルと電子データ)、または紙媒体(1年保証モデル)を用意している。
再使用許諾ソフトウェアと、Windows OSを標準インストールしているのも特徴だ。トレンドマイクロのセキュリティソフト「ウイルスバスター2010」は、プリインストールまたはCD添付で提供している。このほかにも、「新品のACアダプタを添付しているのは当社くらいではないか」(星野敬正・PC事業本部保守サポート事業部東日本テクニカルセンター長)という。
クリーニング作業には、地元企業のジャパンケミテックと共同開発した98%アルカリ電解水の洗剤を使用。「見た目が悪かったり汚かったりすると、クレームにつながる。以前は時間をかけてきれいにしていたが、洗剤のおかげで短時間で作業できるようになったし、何より環境にやさしい」と効果を実感しているそうだ。簡単そうに見える清掃作業だが、精密製品だけに、経験とノウハウが必要だという。
同社は、中古PCの販売を手がける数少ないメーカーの一社。新品PCの売り上げにマイナスの影響がありそうだが、清水康雄・PC事業本部カスタマーサービス本部リフレッシュPC営業部長は、そんな懸念を一蹴する。「確かに、当初は新品の売り上げが落ちるのでは、と心配したが、最近はファミリー層が中古も買っていく。むしろ売り上げは向上している。販売店からは『数が足りない』といわれるくらい」と笑顔で話す。

(上)98%アルカリ電解水の洗剤で汚れを落とす
(下)出荷を待つ「NEC Refreshed PC」
川上キカイ
PCだけでなく全方位で
中古ビジネスを展開
川上キカイが埼玉県坂戸市の工業団地に構える事業所には、PCだけでなく、工作・産業機械などが所狭しと並ぶ。機械類も、PCと同じ中古の商材だ。伊藤敏夫・事業企画推進室室長は、「これほど全方位で中古製品の販売事業を展開しているのは、当社くらいではないか」と胸を張る。
搬入されたPCは、当日中に搬送機で2階に上げられ、まずデータを消去する。クリーニング、デバイスチェック、OS搭載という一連の再生プロセスを経て、出荷という工程だ。一部は、データ消去後にOS未搭載のまま出荷することになる。データ消去には、ブランコ製のソフトウェアを採用。法人や教育機関から、データ消去だけの依頼が寄せられることもあるという。
再生ラインを経たPCの一部は、自社ブランド「リザード」の名称で販売している。中古PCは、持ちやすいように工夫されたオリジナルの梱包。「新品の光学式マウスやマイクロソフトのメディア、再セットアップのためのドライバ、マニュアルがついている」という。

(上)ブランコ製のデータ消去ソフトが稼働中
(下)納入したPCなどを垂直搬送機で2階に運ぶ
・記者の眼
中古PCに対して、ネガティブなイメージを抱くユーザーは少なくない。それが徐々に改善されてきた背景には、販売事業者の地道な取り組みがある。さらには、マイクロソフトが再生中古PC向けのライセンスプログラムを導入したことも、後押しになっているだろう。ただ近年は、新品の低価格化に伴って、ともすれば値下げ合戦に陥りがち。ビジネスユーザーにも中古PCの有用性を訴求するなど、多角化戦略が必要となっている。