世界同時不況をきっかけとして、製造業を中心に国内企業の新興国進出や企業再編が活発化し、グローバルSCMの構築ニーズが高まりをみせている。ITベンダー各社は、こうした動きをみて現地SIerやSCM専業ベンダーとのアライアンスや現地法人の設立などの動きを加速させ、グローバルSCMソリューションの強化に乗り出した。
サプライチェーン改革は待ったなし
中国や台湾、韓国などで低価格で高品質な製品を製造することができるようになった現在、サプライヤから顧客までを含めたグローバル規模でのサプライチェーンの可視化と全体最適化が喫緊の課題となっている。現地市場特有のさまざまなニーズに対応することが求められており、グローバルSCMによる迅速な製品供給力が勝敗のカギを握る。
ロジスティクスの観点が不可欠 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の西田一範・ESイノベーション本部製造インダストリイノベーション部マネージングコンサルタントは、日本の製造業について、「サプライチェーンは、基本的には3年前に完成していた。だが、それは国内のみにとどまっていた。現在の製造業は、海外拠点を含めて物流コストを把握できるようにする必要性を感じ始めている。製品そのものの原価コストは削減してきたが、もう限界だろう」と話す。
「国内の製造業は原価コストの削減を優先しがちで、大事な要素が欠けている」。日本IBMの前平克人・グローバルビジネス・サービス事業インダストリアルプロダクツ・サービス事業部戦略コンサルティンググループリーダーパートナーもこう指摘する。生産拠点を海外に移転する動きは近年に始まったことではないが、大事な要素、つまりロジスティクスの観点が欠けていたというのだ。
製造業にみられるこうした姿勢は、生産拠点の個別最適化を引き起こした。野村総合研究所(NRI)の辻直志・サービス・産業システム事業本部主席コンサルタントは、「今までは海外工場のシステムは、とにかく動けばよいという意識で、それぞれ別個のシステムを導入してきた」と説明する。サプライチェーンが内包する問題に頭を抱えるメーカーの現状を明らかにするにあたって、よく引き合いに出される例だ。グローバル拠点間のマスター統合で、いかにPSI(生産・販売・在庫)情報の可視化ができるかが課題解決のポイントとなる。
NRIの郡司浩太郎・上席コンサルタント/ビジネスイノベーション事業部グローバルイノベーション・コンサルティンググループマネージャーは、「2008年のリーマン・ショック後にPSI情報を可視化するという問題意識が高まってきた」とみている。 世界経済に大打撃を与えたリーマン・ショックは、競争が激しさを増す製造業のサプライチェーン改革を強く迫ることとなった。グローバルSCMの実現に向けた取り組みは、待ったなしである。
顕在化する需要を取り込む
欧米のベンダーはグローバル展開の歴史が長く、蓄積したリソースが豊富で、国内外の企業向けに多彩なソリューションを揃える。対して新参の日本のSIerは、まずは日系企業をターゲットとする事業展開を指向している。
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