MFP(複合機)連携型のネットサービスは、主要MFPベンダーがこぞって力を入れる領域だ。リーマン・ショック以降、MFP機器の販売が大きく落ち込んだ時期でも、MFP連携ネットサービスの売り上げは堅調に推移。ストック型ビジネスの強みをみせつけた。主な販売ターゲットは中小企業で、サービス価格を抑えつつ、いかに多くのユーザーを獲得できるかが今後の収益力を左右する。(文/安藤章司)
figure 1 「市場動向」を読む
有力収益源に期待
MFP(複合機)出荷台数は2009年、大きく落ち込んだ。リーマン・ショックに端を発する経済危機で、IT投資が抑制されたことによるもので、IT調査会社IDC Japanによれば、2008年第3四半期から6四半期連続で前年同期を割り込んでいる。2010年に入ってからは、投資抑制の反動で回復基調にあるものの、「国内MFP市場の成熟度合いは今後も変わらない」(大手MFPベンダー幹部)と、市場としての成長期はすでに過ぎたとみられている。
そこで、注目を集めるのがMFPがもつネットワーク接続機能を使った“ネットサービス”だ。プリントやコピー、スキャナ、ファクシミリなどの複数の機能を併せもつMFPは、アナログドキュメントとデジタルドキュメントのインターフェースの役割も担うキーデバイスである。ここにMFPベンダーが独自の有料ネットサービスを付加することで、機器販売やトナー、保守サービスなどに続く有力な収益源に育つことが期待されている。
国内レーザーMFPの出荷台数構成比と伸び率推移
figure 2 「主要プレーヤー」を読む
御三家、サービス競う
MFPのネットワーク接続機能を使ったサービスは、富士ゼロックスの「beat」やリコーの「NETBegin」、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)の「HOME」などが有名で、ともに中小企業をターゲットとしている点で共通している。最も早くサービスを始めた富士ゼロックスは、「中小企業の業務効率を高めるツール」(富士ゼロックス・岡崎宏晃・ビジネスソリューション・サービス営業部長)として2002年に「beat」を投入。ネットサービスを提供するための専用アプライアンスを客先に設置し、ウイルス対策やファイヤーウォール、自社製複合機との連携を行う仕組みだ。リコーは、インターネット接続やウイルス対策、ネットワーク構築サービスなどをセットにした「NETBegin」を2005年にスタート。キヤノンMJは独自に開発したウイルス対策などに加え、独自のグループウェアやIT資産管理、シングルサインオンなどの機能を包含した「HOME」を2009年から始めている。
MFPベンダー主要3社のネットサービス概要
figure 3 「勢力」を読む
富士ゼロックス、先行強みにシェアを拡大
IT管理者が不在、または兼任であることが多い中小企業をターゲットとする主要なMFP連携ネットサービスは、できる限り価格を抑えたうえで、ネット接続やウイルス対策、文書ストレージサービス、複合機との連携などをワンストップで提供する必要がある。自前でのIT機器の管理を重荷に感じている多くの中小事業所のユーザーにとって、使い勝手のよい包括的なサービスメニュー体系になっていることが特徴だ。
中小企業向けMFP連携ネットサービスの最大シェアを獲得しているのは、サービス開始時期が最も早かった富士ゼロックスの「beat」だ。ユーザー数は明らかにしていないが、本紙の推計では10万ユーザー数を射程内に入れているとみられる。韓国でも同様のサービスを展開するなど、国内外でのシェア拡大に余念がない。後を追うのがリコーの「NETBegin」で、「リコーのMFPや複写機を使う中小事業所のうち、NETBegin導入率は15%余りに達している」(リコーテクノシステムズの服部伸吾・ビジネス推進センター副センター長)と、堅調にシェアを拡大。2009年、MFPの機器販売は大幅に落ち込んだが、ネットサービスは主要3社ともに堅調に推移するなど、景気に左右されにくいストック型ビジネスの強みをみせた。
主要MFPベンダーの中小企業向けネットサービスの勢力図
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MFPで培った販路を生かす
主要MFPベンダーが、こぞってMFP連携ネットサービスに力を入れるのは、顧客単価をアップさせるためだ。ユーザー事業所には、直販やビジネスパートナーを通じて、すでにMFPを納入している。この販売チャネルを使い、専用アプライアンスというゲートウェイを売り込むことができれば、自社製MFPだけでなくユーザーがもつパソコンやサーバーに向けたサービスを展開することができるというわけだ。
直販とビジネスパートナーによる間接販売がほぼ半々を占めるというキヤノンMJの「HOME」は、IT資産管理、シングルサインオン、グループウェアサービスなど、最新のサービスを揃える。価格は月額1万2000円からで、今後は「サービス型のアプリケーションサービスをより一層充実させる」(キヤノンマーケティングジャパンの沢田泰一・ドキュメントソリューション企画部HOME・インターネット企画課長)方針を示す。ライバルのリコーも「自社だけでなく、有力ソフトベンダーのサービス型ソフト製品との連携強化を検討している」(リコーの遠藤裕史・ソリューションマーケティング室ITサービスマーケティンググループリーダー)と、MFP販売で培った販売チャネルを生かしつつ、品揃えや付加価値の向上に努める。
MFPベンダーのネットサービス
キヤノンマーケティングジャパン「HOME」の例