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<プリンタメーカー座談会>2010年度もエコとコスト削減が主テーマ 官需を中心にモノクロ機需要増す(前編)

2010/03/25 19:56

週刊BCN 2010年03月22日vol.1326掲載

 2009年の国内ページプリンタ市場は、「環境配慮」や「コスト削減」要求が強まるなかで、苦戦を強いられることが予想された。実際、前半戦はこうした要求と経済不況の波を受けて、前年度比で販売台数を落とすメーカーが多かったようだ。ところが、後半戦に入ると、自治体や文教などの官需や、民需でも「凍結」「先送り」が解け、プリンタ需要が回復へ向かった。これを牽引したのが、帳票など基幹出力用途などで必須なモノクロプリンタ。2000年以降の5年周期で訪れる「買い替え」も重なり、大きく実績を伸ばすメーカーが目立った。2010年は、引き続き「環境配慮」と「コスト削減」が各メーカーの大きなテーマとなっている。そのなかで各プリンタメーカーはどう戦うのか、NEC、エプソン販売、キヤノンマーケティングジャパン、ブラザー販売、リコーの販売責任者に座談会形式で聞いてみた。

出席者:
エプソン販売

マーケティングセンター
プロダクトマーケティング部 部長 宮西徳郎氏
リコー
グローバルマーケティング本部商品マーケティングセンター
第二商品戦略室マネージャー
中村貴行氏
NEC
パーソナルソリューションビジネスユニット
ディスプレイ・ドキュメント事業部 事業部長
岡田靖彦氏
キヤノンマーケティングジャパン
ビジネスソリューションカンパニーBSマーケティング統括本部
オフィスデバイス商品企画本部ページプリンタ商品企画部部長
松永圭司氏
ブラザー販売
マーケティング推進部 商品企画G担当部長
大澤敏明氏

司会:本紙編集長 谷畑良胤

「買い控え」から一転、需要回復基調へ
09年度下半期は、前年対比でプラス

 ──各種調査会社のページプリンタ市場に関するデータをみますと、依然として「緩やかに減速」する傾向にあります。現状の同市場をどう分析していますか。

 松永(キヤノンMJ)
 2009年は経済不況が大きく影響して、1~6月が非常に厳しい状況でした。当社は民間大手企業の顧客が多く、ここでの「買い控え」が大きかった。ただ、09年中は、多くの大型案件を見込むことができ、これが2010年にスライドするなど「フォローの風」が吹いてきています。

 とくに、当社でいう「再販チャネル」での販売は、急激に業績が回復しています。09年下半期(7~12月)では、シングルファンクションのカラー機が対前年を2ケタに迫る伸びを達成しました。また、A3モノクロ機は、同チャネル経由だと年間で前年と同等の実績を残せています。

 岡田(NEC) 現在の景況感を受けて、2009年度上半期(09年4~9月)は、08年度下半期(08年10月~09年3月)以上に厳しい状況でした。全体としては民需が減少しています。当社はプリンタだけでなく基幹システム全体を販売しておりますが、やはり民需を中心にIT投資が抑えられていると感じます。

 ただ、徐々に景気回復の兆しが見え、当社の場合、下半期からは前年同期に比べてプラスで推移しています。とくにシングルファンクションプリンタでは、案件当たりの台数は依然少ないものの商談数としては増えています。いままで「買い控え」ていた企業に動きが出始めたと判断しています。

 宮西(エプソン販売) 2009年度(2010年3月期)は、皆さまがおっしゃる通り、総じて民間のまとまった案件が減少しました。それに対して、官公庁・自治体、文教については、政府の「特別補正予算」や文教向けの「スクール・ニューディール構想」などを受け、官需の案件を獲得できました。

 そのようななかで、民間向けは小口の商談を多く掘り起こして受注につなげる営業展開をしてきましたが、確かに09年12月に入った頃から「回復感」が出てきています。また、年度末に向けて、民間のロット案件見込み・受注が増えてきていますので、回復基調にあるとみています。

 中村(リコー) プリンタ市場の全体的な需要が厳しいという認識は、皆さんと共通しています。ただ当社に限ってみますと、おかげさまで好調な実績を残せています。とくにモノクロのレーザープリンタは09年度(2010年3月期)で、累計すると2ケタ成長に近い販売台数実績を残せそうです。 08年のリーマン・ショック以降の「買い控え」はあったのですが、「凍結」「先送り」にした案件が戻りつつあるとみています。民需の「買い控え」が厳しいのは事実ですが、官需向けで「凍結」「先送り」した案件が少しずつ戻ってきています。

 また、「一般OA用途」と「業種業務用途」という区分けでプリントボリュームをみてみますと、「一般OA用途」は若干落ちていますが、「業種業務用途」では落ちていないという認識をもっています。

 大澤(ブラザー販売) 当社の09年度(2010年3月期)は、前半戦が厳しかったです。レーザー複合機などで前年同期割れになりました。当社製品の性格上、SOHOや店舗系に納入しているケースが多いのですが、そのあたりの案件が前半厳しかったものの、後半からは回復基調に転じています。皆さんと同じ傾向ですが、カラー機よりもモノクロ機が比較的堅調に推移しています。

NEC
岡田靖彦 氏

パーソナルソリューション
ビジネスユニット
ディスプレイ・ドキュメント事業部
事業部長


【担当領域】
小型・大型ディスプレイやレーザープリンタ、ドット・ラベルプリンタ、FAX、複合機を担当する。

MultiWriter 2900C(A3カラープリンタ)
モノクロ:35.8ppm
カラー:8ppm
用紙サイズ:A3
価格(税別):14万8000円

MultiWriter 8250N(A3モノクロプリンタ)
モノクロ:30.5ppm
用紙サイズ:A3
価格(税別):11万8000円

【主力製品】
 NECでシングルファンクションプリンタで主力となっている機種は、基幹業務向け販売しているA3モノクロだ。A3モノクロとしては2009年12月に新ラインアップを揃え、さらにモノクロ市場を拡大する。レーザーカラープリンタに関しては、「MultiWriter 2900C」が現在最も販売を伸ばしている。同機は一般オフィスと基幹業務用途の両面で使われている。
 現在の全ラインアップは、カラーが7機種、モノクロが11機種の計18機種を備えている。それ以外には、FAX・複合機やラベルプリンタ、ドットインパクトプリンタを含め、ドキュメント回りとITシステムをトータルに提案する。

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