基幹業務のなかではシステムの独立性が比較的高く、データを外部に置きやすい人事系システム。そんな事情から、大企業を中心にSaaSが普及の兆しをみせている。とくに、外資系メーカーが強いタレントマネジメントの領域でSaaS利用が伸びている。中堅・中小企業(SMB)市場でも、選択肢の一つになりつつある。

人事系システムの方向性
人事管理システムは、従業員が100人超の規模の企業が導入する事例が多い。企業規模が小さいほど、未導入の割合が高くなる。
年商100億円未満の企業に強いオービックビジネスコンサルタント(OBC)の西英伸・営業本部マーケティング推進室室長代理は、「人事管理システムは新規開拓の余地が大きい。まずは、『給与奉行』を導入しているユーザー企業への訴求を強める」と話す。
ピー・シー・エー(PCA)では、就業管理システム+給与計算システムの提案が多く、とくに医療機関向けで就業管理システムの販売が好調に推移している。これらを呼び水に人事管理システムを拡販していく考えだ。
従業員を多く抱える企業では、様相が異なる。国産パッケージを中心に人事管理システムを導入し、給与計算や就業管理についてのみSaaSを利用する事例がみられる。
一方で、人事管理システムのSaaS利用も活発化し始めている。ラクラスは、ソフトバンクグループとして事業を開始し、SaaS+BPOのビジネスモデルで急成長している新興企業。クロスヴィジョンインターナショナルは外資系企業を中心に強みをもつ。いずれも直販が主要な販路だ。
国産メーカーが中核を占める人事系システム市場だが、タレントマネジメントの領域では外資系のSaaS型アプリケーションベンダーが勢力を増している。とくに、企業のSaaS利用が活発化している領域でもある。グローバル化に伴う人材確保やキャリア開発・評価制度の透明性向上などへの関心が企業で高まっていることが、これを後押ししている。大企業での導入事例が圧倒的に多いが、SMBでも選択肢の一つとなりつつある。
シルクロードテクノロジーは、大企業の海外拠点や子会社展開で採用が進んでいる。
給与計算システムなどは、日本独自の業務をよく知る国内メーカーと協業し、補完することが考えられる。今後は国内事業者のデータセンター経由で提供する可能性も示唆する。また、プライベートクラウドでの提供も検討している。
それぞれ強みをもつ国内勢と外資勢が手を組み、国内勢の営業力・販売網を駆使するような試みが出てくれば、SMB市場の開拓が進みそうである。とくに、企業規模が小さいほど、他社との協業モデルが重要性を帯びてくる。(信澤健太)