NTTコムウェアは、仮想化技術を駆使したシンクライアントを構築した。同社やグループ会社、協力会社を含めておよそ5800人のユーザーが使う大規模なものだ。構築に当たっては仮想化技術に長けたネットワールドが技術的な支援を行った。もはや旧式となったクライアント/サーバー型、あるいは従来型のシンクライアントよりも、コストパフォーマンスや可用性が格段に向上した。
NTTコムウェア
会社概要:NTTの情報・通信システム部門を母体として1997年に創業。ミッションクリティカルな情報系システム/通信系システムを数多く構築してきた経験と実績を活かし、多岐にわたる高信頼のICTサービスを提供している。
システム提供会社:ネットワールド
サービス名:「VMware vSphere」構築支援サービス
NTTコムウェアのシンクライアントアーキテクチャ構造の推移
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ネットワールド 平松健太郎次長 |
NTTコムウェアは、業界に先駆けてシンクライアント化に取り組んできたSIerである。運用コストがかさみ、情報漏えいのリスクも高いクライアント/サーバー(クラサバ)型からの脱却を推進。2006年には、クライアント端末の情報をサーバー側で管理するサーバーベースドコンピューティングの採用を決定した。以来、NTTコムウェア社内のクラサバを段階的にシンクライアントへ移行してきた。シンクライアントで最も初期から実用化されている「画面転送方式」や、パソコンのハードウェアごとサーバー室に収容する「ブレードPC方式」など、その時期に最先端とされた技術を貪欲に社内システムに適用して、2009年には累計約3600台をシンクライアント化した。端末の不具合が発生しやすいクラサバ方式で費やしてきた人件費を含む保守コストは、シンクライアント化によってほぼ半減となっている。
しかし、サーバーベースドの弱さは、その構造上、クライアントの処理負荷がサーバーに集約されてしまう点にある。そこで導入を決断したのが「VMware vSphere」や「Citrix XenApp」など最新の仮想化技術である。処理負荷が集中するサーバーを仮想化し、複数のハードウェア上で稼働する複数のバーチャルマシン(VM)での分散処理を行い、かつ物的なデータセンター(DC)も複数に分けるアーキテクチャだ。サーバーベースドのシンクライアントでありながら、センター側では分散処理を行うことで、「システムの安定性や可用性を高め、かつ運用の手間を格段に軽減することが可能」(NTTコムウェアの尾西弘之・サービス事業本部SmartCloud推進部門長)となった。
システムの構造は、ハードウェアとWindowsサーバーの間に仮想化ソフトのVMware vSphereを載せ、WindowsサーバーOSを仮想化する。この仮想マシン上に、アプリケーションを仮想化するCitrix XenAppを載せ、クライアントを2010年7月までに完全仮想化を実現した。構築に当たっては、仮想化ソフトの販売や技術支援で国内トップクラスの実績を誇るネットワールドが支援した。「当社の専門的な知見に基づくコンサルティングを実行した」とネットワールドの平松健太郎・ストラテジックプロダクツ営業部次長は語る。NTTコムウェアは、これによって迅速かつスムーズな仮想化にこぎ着けた。
直近ではNTTコムウェアやグループ会社、協力会社を含めておよそ5800人のユーザーが使っており、これまでネックとなっていたサーバー負荷の問題も解決している。ハードウェアを構造的に分離したことで、都内のDCと約50km離れた近隣のDCの2か所で同期させながらシンクライアントをバックアップしている。万が一、都内のDCに大きな障害が発生しても、仮想マシンをネットワーク経由で近隣のDCへ移行させることで「システムダウンの影響を最小限にとどめることができる」(NTTコムウェアの櫻井秀夫・サービス事業本部サービスプロバイダ部スペシャリスト)という。
NTTコムウェアでは、仮想化アーキテクチャによるシンクライアントが稼働したことで、同システムの外販にも取り組んでいく。(安藤章司)

NTTコムウェアの尾西弘之部門長(右)と櫻井秀夫スペシャリスト
3つのpoint
・仮想化でサーバーベースドコンピューティングの弱点を補う
・「VMware vSphere」と「Citrix XenApp」を巧みに組み合わせ
・専門的なコンサルティングサービスを活用で迅速に立ち上げ