「部品は揃っている。今後は、ユーザー企業のニーズをいかに汲み取れるかがカギを握る」──。このほど、業務プロセスを分析・最適化するBAO(ビジネス・アナリティクス・アンド・オプティマイゼーション)のコア・ソリューションを策定した日本IBM(橋本孝之社長)は、自社の直販営業に加え、BAOのパートナー販売を本格化することに取り組んでいる。近々、パートナー支援策を策定し、7月にスタートした今年度下半期には、BAO事業の2ケタ成長を狙っていく。
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ソフトウェア事業 ビジネス・アナリティクス事業部 国本明善事業部長 |
IBMの米国本社は、成長著しい新興国での事業展開やクラウドコンピューティングに加え、2009年から手がけているBAOを、グローバルでの成長戦略のキーワードとしている。製造業を中心として、企業の海外進出が加速している日本では、膨大な情報量を処理する需要が増大している。こうしたことから、日本IBMの2011年度上半期(1~6月期)には、BAO事業が「非常に好調に推移した」(ソフトウェア事業ビジネス・アナリティクス事業部の国本明善事業部長)という状況だ。
国本事業部長は、「日本はさまざまな分野において市場が成熟しているので、事業を拡大するうえで、経営者にはマーケットや自社ビジネスの将来像を正確に把握することが求められる」として、業種や企業規模を問わず、情報の“賢い”利活用のニーズが、BAOの需要を引っ張っていくとみる。ビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェア「COGNOS」や統計解析ソフトウェア「SPSS」を核とするBAOのコア・ソリューションをもつ日本IBMにとって、ユーザー企業の業務内容を詳しく把握し、ツールを組み合わせて適切なソリューションを提供することが勝敗を決する決め手になる。
日本IBMはBAOを販売するにあたって、これまでハイタッチセールスに注力してきたが、「BAOを売る側はIBM以外の世界もよく知っている必要がある」(国本事業部長)と判断したことから、今後、システムインテグレータ(SIer)などパートナーを経由にした販売を強化していく。「具体的な支援策は今、策定中」という国本事業部長だが、近々、BAOの売り方をレクチャーするパートナー向け研修などのかたちで、「製品に関する知識にとどまらず、ユーザー企業のニーズを理解するためのスキルがあるプレーヤーを増やしていきたい」(同)としている。
国本部長は、今夏に節電対策の一環としてビルのエネルギー管理を改善するニーズが高まるなど、BAOの特需が生まれると見込んでいる。節電関連の限定的な需要と、経営者が自社ビジネスを展望して将来像を把握したいとする継続的なニーズが絡み合う状況にあって、同氏は将来に向けてのBAO事業の拡大に意欲を示している。今年度の下半期(7~12月)には、「2ケタ成長は間違いない」とみて、パートナー支援を充実するなどの方策により、販売に拍車をかける。(ゼンフ ミシャ)