丸紅インフォテック改め、シネックスインフォテック(シネックスインフォ、ロバート・ファン社長&CEO)が2010年12月に誕生してから約7か月が経過した。ビジネスプロセスサービス大手の米シネックスの創業者で前会長兼CEOのロバート・ファン氏の陣頭指揮の下、「ベストなサービスを最も効率よく提供するディストリビュータ」を目指し、多くの改革を断行。成果が徐々に現われてきている。今年7月11日には、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の松本芳武氏が8月1日付で社長に就任し、ファン氏は会長となることを電撃発表した。変革のスピードをさらに加速しようとしている。(信澤健太)
着実かつ大胆に、事業拡大を目指す
ロバート・ファン社長は、今年6月、同社が取り扱うベンダーの新製品やソリューションを紹介するイベント「SYNNEX IT Conference 2011 TOKYO」の基調講演で、「ディストリビュータの基本的役割は、できる限り迅速に商材を流通させることにある。物流機能をアウトソーシングすることは、レストランがキッチンをアウトソーシングするようなものだ」と強調した。2010年12月に社長に就任して以来、物流機能の内製化を進め、千葉県柏市と大阪府茨木市に拠点を設置。それぞれ、今年2月と5月にカットオーバーを迎えた。
旧丸紅インフォテックは、丸紅グループのロジパートナーズに物流業務を委託していたが、米シネックスの傘下に入ったことに伴い、これを変えた。2拠点の施設はロジパートナーズなどと賃借契約を結び、柏市の拠点での運送手配の関わりを除き、「器だけを借りている」(坂元祥浩・執行役員管理部門長補佐兼経営企画部長)状況だ。
すでに、オペレーティング(物流関連)コストの大幅な削減効果が現れてきている。具体的には、現状で15~20%のコスト削減効果が出ており、(物流拠点の)引っ越しなど一時的な出費を除外すれば、25%程度の削減にまでなっているという。今後は、拠点の追加や自社施設の建設の可能性もあるとする。なお基幹システムは、営業の効率向上を目的に、シネックスの「カスタマーインフォメーションシステム(CIS)」を導入した。
費用対効果を最大化するローコストオペレーションの実現に加え、サービスの強化に力を入れている。シネックスは、コントラクトアセンブリサービスやビジネスプロセスアウトソーシング、オンラインサービス、金融サービス、テクニカルソリューションサービスなどを展開し、事業運営に大きな優位性をもたらしている。
日本国内では、シネックスとファン社長が出資する投資会社であるグローバルBPOがスリープログループの株式を16.13%まで買い増し、筆頭株主となった。スリープロは、コールセンターやフィールドインストレーションなどのサービスを提供している企業。2010年度(10年10月期)の連結売上高は135億9200万円、営業利益2億500万円、経常利益1億4400万円で、純損失が6億3500万円だった。
スリープロとシネックスインフォとの資本関係はないが、グループ間でのシナジー効果を最大限に発揮し、新しいビジネスチャンスに挑戦していく構えだ。ファン社長は、「国内にはプレーヤーが多すぎる。チャンスがあれば、積極的に買収していく」との姿勢を示している。
このほか、「グリーンテクノロジー」をキーワードに省電力性に優れたIT商材を揃えたり、取り扱いメーカーを拡大したりすることに意欲をみせている。また、内部研修プログラムを立ち上げており、「労働時間の10%を研修に充ててもいいと考えている」(ファン社長)という。
7月11日には、日本HPで、エンタープライズ・ストレージサーバー事業統括執行役員などを経て、現在はエンタープライズビジネス営業ストラテジック・プロジェクト担当を務める松本芳武氏が8月1日付で執行役員社長&CEOに就任することを電撃発表した。ファン社長は代表権をもつ会長に就任し、これまでの基本路線を踏襲しつつ、事業拡大に弾みをつける意向を示している。
シネックスインフォテックの改革
表層深層
シネックスインフォテックが誕生してから7か月が経過した。旧丸紅インフォテックから大きく変貌を遂げていることを実感する。 2010年12月、ロバート・ファン氏はシネックスインフォテックの社長に就任して間もない頃、こう話していた。「半年後、1年後にまた取材に来てくれればいい。その時に成果をみせる」。
今年6月に取材した際には、その言葉通り、成果を披露してくれた。物流機能の内製化が大きな実を結んでおり、コストは着実に減少し続けている。事業への好影響を期待し、内部研修プログラムを立ち上げたり、サービス事業の強化に積極的に取り組んだりもしている。
ファン社長が強力に推進する改革は、とどまるところを知らない。7月11日、日本HPの松本芳武氏が8月1日付で社長&CEOに就任することを電撃発表した。新しい視点をもった人材を引き入れることで、事業執行体制を強固なものにすることが狙いのようだ。
新会社発足の当時、国内有数の大手ディストリビュータである旧丸紅インフォテックが外資系企業の傘下に入ることは極めて異例だったが、大手メーカー出身者が大手ディストリビュータの経営トップに就任するのも極めて異例。まさに、異例づくめである。
松本氏の新社長就任の経緯はあまり定かではないが、米HPは米シネックスとの間で年間3000億円以上の取引がある。従来から非常に重要なビジネスパートナーであることが大きく働いた可能性は否定できない。