外資系企業が国内の大手ディストリビュータを傘下に収めるという異例の出来事が起きてから2か月余り。丸紅インフォテックは、グローバル“ハイブリッド企業”を目指し、シネックスインフォテックとして新たなスタートを切った。ファーストステップとして目指すのが年商2000億円。実現するのは決して容易な数字ではないが、ロバート・ファン社長は固い決意を表明する。
日本市場に再挑戦
──台湾のご出身で、日本の高校と大学を卒業後、米国に渡ってCOMPAC Microelectronics(現・SYNNEX)を創業されています。日本のIT流通業界について、どのようにみていますか。
ファン 実は、社長に就任するまでに、毎年3~6回は来日していました。目的は、プライベートだけでなくオンビジネスなど、さまざまです。
日本のIT流通業界はもっと成長できると思っています。ただ、日本はリーダーシップに欠ける面があるうえ、保守的でリスクを取らない。業界の方々は日本の問題点を認識していながらなおざりにしてきたのではないでしょうか。 これからは、日本に長期間滞在して、じっくりビジネスに取り組んでいきます。
──日本の市場や業界については、以前からご存じなのですね。
ファン 15年くらい前に遡りますが、MIT(マサチューセッツ工科大学)時代の友人と日本でシネックスを設立しています。結局、うまくいかずに売却しましたが…。日本の流通システムでは、新規参入が難しいのです。5~6年という短い間に、年商240億~250億円までになりましたが、それ以上には成長できませんでした。
企業は成長が止まると、従業員も成長できません。シネックスには立派なシステムがあり、すぐれた従業員がいましたが、積極的にM&Aを仕掛けて規模を追求していかないと成長は止まってしまう。
M&Aのチャンスには巡り合えませんでした。その頃、丸紅インフォテックもM&Aの候補に挙がっていました。それでも株を少し保有するくらいしかできなかった。
──社長就任までの経緯は?
ファン 丸紅インフォの買収と社長就任の件は、2010年の初めにもちかけられました。本当はもう定年だったのですよ。SYNNEXの会長を辞めて、これからは母校の九州大学、MITなどの教育に関することやチャリティに精を出そうと考えていました。
とはいえ、今回のような話はめったにありません。しかも、この仕事は米国人では無理でしょう。日本の文化をよく理解していて、米国のよさを日本で生かせる人物はそうはいません。私くらいのものです。
また、経験も豊富にもっている。この業界で、私より長いキャリアの人間はいません。30年以上のキャリアがあります。私なら十分にこの状況を変えられる。よし、やろうと思いました。
──15年ほど前に日本市場に参入し、一度事業に失敗しておられる。再挑戦ということになりますか。
ファン 失敗ではありませんよ。売却して非常に儲かりました(笑)。ただ、売却した後のシネックスは発展していくためのビジョンがない。心残りではあります。
二百数十億円という売り上げは、中途半端で規模も小さいほうでした。ですが、丸紅インフォは年商が1000億円以上あり、すでに大きな商圏があります。まだまだ成長できます。
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