台湾SIベンダー其の一
MITAC INFORMATION TECHNOLOGY
(神通資訊科技股・有限公司)
鉄道システムでアジア圏へ進出
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| 「日本の高い技術を取り入れ世界展開を強化する」と語るMITAC INFORMATION TECHNOLOGYの皜臺方・総経理 |
MITAC INFORMATION TECHNOLOGY(神通資訊科技股・有限公司)は、パソコンやサーバーなどハードウェアの製造・販売を行っているMiTACグループのSI子会社だ。MiTACグループは、世界従業員が約4万人で、年商3兆円。MITAC INFORMATION TECHNOLOGYは、台湾内の政府、社会インフラ、金融に実績があり、年商が60億台湾ドル(約165億円)。最近では「海外展開に力を入れている」(皜臺方・総経理)という。
今年3月には、日本の日本信号と組み、同社の自動出改札装置など駅務合理化機器などで、インド・チェンナイ(旧マドラス)の入札で獲得している。MITAC INFORMATION TECHNOLOGYは台湾内で、台湾高速鉄道(新幹線)や台北市内の地下鉄・MRT(都市鉄道)向けにICカードに対応した改札発券システムなどを、日立製作所のローカルパートナーと連携して受託した実績がある。「このシステムは、現在、タイやインド、マカオなどの交通機関にも提案中だ」(皜・総経理)という。また、中近東では、アラブ首長国連邦のドバイ空港に通関システムなどを納入している。
皜・総経理は「日本のITベンダーやソフトベンダーとは、資本関係を深めている。最近では、日本の某社のスマートセンサー(超高速カラーCCDタイプカメラ)のOEM生産を請け負った。日本の先進的なソフトなどを台湾で各国仕様に安価にカスタマイズできるので、世界に出る機会を日本の会社と共同でつくりたい」と、日本ITベンダーのもつ高度な技術を取り入れ、自社ソリューションとして世界展開を加速している。
台湾SIベンダー其の二
SYSCOMグループ
アジアNo.1のSIerを狙う
中華民国情報産業協会(CISA)の劉瑞隆理事長がグループ代表を務めるSYSCOMグループは、1975年に設立された台湾のSI(システムインテグレーション)企業だ。30年以上にわたって台湾内の金融、行政、証券会社、医療、通信、学術関係などにシステムを提供する台湾最大のシステムインテグレータ(SIer)だ。現在の従業員は約1000人で、台湾本社のほか日本(東京・神楽坂、グループ会社のDBMaker内)、米国(カリフォルニア州・シリコンバレー)、中国(西安)に拠点を構える。劉グループ代表は「近い将来、SYSCOM社はアジアでNo.1のSIerになることを目指している」という。
日本のITベンダーでは、東京システムハウスやCIJ、ビック東海などと資本関係にある。日本で仕入れたソフトをカスタマイズして、台湾内で販売実績を上げている。例えば、ビック東海のEDI(電子データ交換)パッケージである「ATHELAS(アティラス)」の代理店としてSYSCOM社が台湾と中国で販売している。
売上高は明らかにしていないが、グループ全体の売上高のうち海外が35%を占め、そのうち中国向けが8割に達している。劉グループ代表は「中国市場は、提供する製品の領域で早期に浸透させるため、大量に販売する手立てを構じなければ開拓できない。当社は、最小限のリソースで最大限の力を中国で発揮できる」と、日本ITベンダーが中国で展開する際に製品を販売する能力があると強調する。
SYSCOMグループは、台湾内の公共系をはじめとして大型案件を手がけるソフトベンダーとして2005年12月にCMMIレベル3を取得。このほど、台湾のソフトベンダーとして初めてCMMIレベル5を取得している。
台湾SIベンダー其の三
SYSTEX(精誠資訊股・有限公司)
金融を強みに中華圏への展開を加速
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| 「日本企業が中華圏へ出る際の手伝いをする」と語る張皇裕・副総経理 |
アジア全域で営業する世界クラスの情報技術サービスとソフトウエア開発のサービスベンダーであるSYSTEX(精誠資訊股・有限公司)は、金融システムを中心としたサービス事業とアウトソーシング事業を展開し、年商129億台湾ドル(約355億円)を稼ぐ台湾最大のSIerだ。
同社の張皇裕・副総経理は「米国や欧州のIT製品を仕入れて、アジアに展開している。日系の某銀行や野村證券の中国でのシステムをアウトソーシングしたり、クラウド環境を整備するなど、日本との関係性が深まっている。当社は、世界のIT商材を中華圏で提供するトップパートナーになることを目指している」と話す。
日本のITベンダーとの連携方法としては、次のような展開を検討しているという。「日本企業が中華圏に進出する時、多くが日本のITベンダーが中国などでのシステムを構築するが、その際に当社と連携し、ITアウトソーシングを提供できる」(張・副総経理)と、中華圏に出る金融機関や製造業などのシステムの共同受注の拡大を狙う。
全体の売上高に占める中国市場の割合は、今のところ11%と少ないが、日本のITベンダーと組み、この比率を上げていく。