富士通マーケティング(FJM、古川章社長)は、年商300億円以上の大手企業向けERPの新版「GLOVIA SUMMIT」を今年10月末に発売する。およそ5年ぶりにメジャーバージョンアップした戦略商品で、子会社を含めたグループ全体の業績管理機能などを“売り”とする。2年間で新規ユーザー700サイトの獲得という、挑戦的な目標を掲げる。海外に複数拠点をもつ企業をメインターゲットに売り込み、この分野で優位に立つSAPジャパンを追撃する。
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| 渡辺雅彦 常務理事 |
「GLOVIA」シリーズは、大きく三つに区分できる。対象の顧客規模でセグメントし、中小企業向けが「GLOVIA smart きらら」、中堅企業向けが「GLOVIA smart」、そして大企業向けが今回の「GLOVIA SUMMIT」だ。「GLOVIA SUMMIT」は、前名称から数えて14年目の歴史のあるERPで、富士通自身の経理業務ノウハウなどを盛り込んで、バージョンアップを重ねてきた。累計のユーザー数は約1800サイト。主なターゲットは年商規模300億円以上で、海外に複数拠点をもつ企業だ。「国際財務報告基準(IFRS)」への対応を迫られ、国内子会社や海外法人を含めたグループ全体の経営情報管理を必要としているユーザー企業が、これに当てはまる。
この分野に強いのは、外資系ではERP世界最大手の独SAPで、日本企業ではワークスアプリケーションズ。ともに大企業を得意にしている。富士通は、5年ぶりにバージョンアップした新版を武器に、両社を追撃する構えだ。新版では、IFRSに対応したほか、海外子会社がもつシステムとの容易な連携、販売や購買など複数のシステムのデータをすべて抽出し、高速処理する技術などを搭載。財務会計や予算の実績管理だけでなく、受注情報などから将来の業績予測が可能な点などを強みにしている。目標は、2年間で新規700サイトの獲得。14年間で1800サイトの実績からすれば、かなり挑戦的だ。
昨年10月1日、FJMは、富士通ビジネスシステム(FJB)から社名を変更し、中堅のユーザー企業向けのSI・ITサービス事業に集中する体制を敷いた。社名変更とほぼ同時期に「GLOVIA」シリーズの企画・開発部隊をすべて富士通からFJMに移管している。つまり、FJMは、「GLOVIA」の全シリーズでは販社であり、メーカーでもある。これまで獲得してきた「GLOVIA SUMMIT」のユーザー約1800サイトは、「年商1000億円以上の超大手企業に多く使われている」(渡辺雅彦・常務理事ソリューション事業本部副本部長)。ターゲットを年商300億円以上のユーザー企業に置いているものの、実際はそれよりもはるかに大きい企業にしか入り込んでいないわけだ。
挑戦的な目標の達成は、中堅・準大手企業に焦点を絞ったFJMとFJMのパートナー企業が、年商300億~1000億円規模のユーザー企業に「GLOVIA SUMMIT」をきちんと販売できるかどうかにかかっている。(木村剛士)