経済産業省は、クラウドコンピューティング推進施策の一環として「中小企業利活用基盤整備事業」を開始した。これを受けて近畿経済産業局は、中小企業のIT化促進と中小ITベンダーの業態変革を後押しして、「ITの地産地消」を目指す。中小企業のビジネスマッチングに協力的な地銀4行の支援を受けて、中小の潜在ITユーザーを発掘する仕組みの構築を進めている。
「中小企業利活用基盤整備事業」は、クラウドコンピューティングの利活用を通して、中小企業のIT化促進と、中小ITベンダーの業態変革を後押しするための取り組みだ。ベンダー、ユーザー、情報産業協会や商工団体、自治体、ITコーディネータ、民間企業や大学を巻き込んで地域ITコミュニティを形成し、ビジネスモデルを回す。将来的には自立化やITベンダーの下請け比率の低下につなげる考えだ。
近畿地域における「中小企業利活用基盤整備事業」では、四つの研究会で調査研究を進める。その一つは、中小企業のIT化促進とビジネス発掘を目的として自立的に活動する地域組織をつくる「新規ビジネス創出研究会」。二つ目は、企業の経営相談からIT案件を発掘する仕組みづくりを行う「中小ユーザーIT利活用研究会」。三つ目は、地域ベンダーがクラウドビジネスに参入する課題を解決するためのビジネスモデルを検討する「大手・地域ベンダー連携研究会」。そして四つ目が、昨年からITC近畿会が中心となって運営しているSaaSのマーケットプレイスを中心に、サービスを提供するうえでの課題を議論する「マーケットプレイス研究会」だ。研究会が打ち出したビジネスモデルをもとに、「中小ユーザーのマッチング」や、ベンダー同士の交流を促進する「大手・地域ベンダー連携実証事業」につないでいく。
研究会や実証の取り組みを支える窓口として、情報化・産業活性化の推進機関である関西情報・産業活性化センターの「e相談所」がサービスを提供する。「『e相談所』にはユーザー、ITベンダーが登録されている。相談案件に適したベンダーやITコーディネーターなどの専門家を紹介するビジネスマッチングシステムだ」(地域経済部情報政策課の大塚公彦課長補佐)。
「中小ユーザーIT利活用研究会」には、地方銀行4行が参画している。「銀行の営業担当者は中小企業の経営相談を受ける場合も多い。担当者がクラウドの利活用のメリットを知ることで、自行の顧客に紹介してもらえる」(坂野聡・情報政策課長 兼 コンテンツ産業支援室長)。しかし、「銀行の担当者がITベンダーの案件発掘を支援しても、ノルマに反映されないので、その点をどうしていくのかが課題」(坂野課長)という。研究会は先月末頃に立ち上がったばかりで、これから検討を進めていく。
今年10月から来年をめどに実証を開始する予定だ。(鍋島蓉子)