キヤノンITソリューションズの100%出資会社でERP(統合基幹業務システム)の「SuperStream」を開発・販売するエス・エス・ジェイ(SSJ、大江由紀夫社長)は、CMSのクラウドサービス「HeartCore_SaaS」の利用を決めた。パッケージからの移行を経て、「SuperStream」のウェブマーケティング活動の強化にひと役買っている。すでに商談に結びつく成果が上がっており、即効性が実証されたようだ。
エス・エス・ジェイ
会社概要:1986年12月、マコーマック&ドッジ・ジャパン設立。1996年12月、エス・エス・ジェイに社名変更。2008年4月、新会社キヤノンITソリューションズの設立に伴い、同社の100%出資会社となる。
サービス提供会社:鈴与シンワート
プロダクト名:「HeartCore_SaaS」
「HeartCore_SaaS」を利用したSSJのウェブマーケティング
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SSJ 山田誠マーケティング部部長 |
SSJは、中堅・中小企業市場に強いERPベンダーだ。パッケージ/SaaS版「SuperStream-NX」とパッケージ「SuperStream-CORE」の二つの商材を揃え、6000社を超える納入実績をもつ。100%間接販売で、ビジネスパートナーを約100社、SaaS販売パートナーを14社抱える。
同社の山田誠マーケティング部部長は、「従来のウェブマーケティングシステムは、SEO対策が十分ではなかった」と振り返る。SEO事業者にアウトソーシングして一定の効果は上げたが、毎月10万円以上のコストがかかっていた。2008年にオフィスを移転した際には、社内のサーバーがダウンするという苦い経験もあった。そうしたことから、「自社にシステムを抱える時代ではないと感じた」(山田部長)という経緯がある。
ウェブマーケティング強化の第一ステップとして、2009年7月、「HeartCore」のパッケージの導入を決めた。HTML(ウェブページを作成するための言語)の知識がなくても使えるという特徴を評価したのだ。このほか、充実した基本機能や3000社を超える海外・国内での豊富な導入実績、自動SEO機能の実装などが採用決定の要因となった。
2011年2月、クラウド環境に移行。山田部長は、「とてもスムーズに移行できた。移行期間は1週間ほどで、もっと早くできたのではないかと思っている」と満足げだ。クラウドサービスの移行を手がけたのは、SSJのパートナー企業でもある鈴与シンワートである。鈴与シンワートのデータセンター「S-Port」で運用を開始した。SSJは、システム導入の初期費用や毎年の保守費用を大幅に抑えたり、バージョンアップ作業をなくしたりすることが可能となった。
2009年度以降、ウェブ広告の積極展開やダイレクトメール配信、プレゼンテーション動画を多用したウェブサイトを構築してログ解析などに取り組んできた結果、目に見える効果が現れている。2010年度、全体の57.8%を占めていた「SSJ」でのキーワード検索数と、37.0%で追っていた「SuperStream」での検索数が逆転した。「SuperStream」での検索数は51%と過半数を占めるまでになった。「SaaS対応」や「会計システム」「財務会計システム」といったERPに関連する一般用語でも、検索順位が上昇した。すべてが10位以内入っている。
間接販売に頼る同社にとって、「Super Stream」という製品名の検索順位の上昇は大きな意味をもつ。製品ブランドを前面に押し出す戦略展開が功を奏し始めたからだ。並行して、サイトへの訪問者が増加。最も商談につながりやすい資料請求数とセミナーの集客数が伸びている。山田部長は、「商談が増えて、どこから対応するのか選ばなければならないという贅沢な悩みもある」とホクホク顔だ。
2009年に配信を開始したメールマガジン「Monthly SuperStream」の購読者は、順調に会員が増えて8000人を超えた。現在は、潜在顧客や既存顧客に訴求し、セミナー顧客の40%を稼ぐツールにまで成長した。
同社は、製品の選択手段として活用するウェブサイトの位置づけが、製品の単なる情報収集から体感することに変わりつつあるとみている。プレゼンテーション動画はこうした傾向を踏まえたもので、「HeartCore」を活用しながら「メールマガジンやウェブコンテンツなど、ニーズに応じて情報を提供していく」方針だ。ソーシャルメディアの活用も検討しているという。(信澤健太)
3つのpoint
・クラウド環境での“保有しない”システム
・移行期間の短さに満足
・ウェブマーケティングの最新トレンドに対応