F5ネットワークスジャパンのWAF(ウェブ・アプリケーション・ファイアウォール)製品の導入構築を手がけるSCSK(中井戸信英社長)は、WAF事業の40%拡大に取り組んでいる。そのためのツールとして、3月にWAFの運用監視サービスを投入した。SCSKは自社だけではなく、F5ネットワークスジャパンの他の販売パートナーとも連携し、WAF運用監視サービスの展開に力を注ぐ。
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SCSK SCSカンパニー IT基盤ソリューション事業部 セキュリティソリューション部 後藤剛志マネージャー |
「これまでユーザー企業に対するWAFの提案が受注に結びつかなかったケースの多くは、WAFを導入した後の運用サービスができなかったことが要因とみられる」──。SCSKでWAF事業の指揮を執っているIT基盤ソリューション事業部セキュリティソリューション部の後藤剛志マネージャーは、ユーザー企業はWAFの複雑な運用作業を懸念して導入をためらい、結果として、WAFビジネスの拡大はなかなか進まなかったと、今回の運用監視サービスを投入した背景を語る。
そもそもWAFとは、ウェブサーバーへのアクセスを監視し、ウェブアプリケーションを狙った攻撃を検知・防止する仕組み。ウェブアプリケーションのレイヤで、企業の情報セキュリティを図るわけだ。2011年、住商情報システム(SCS)とCSKの経営統合によって誕生したSCSKは、SCSとして2009年から、F5ネットワークスジャパンのWAF製品「BIG-IP Application Security Manager(ASM)」を取り扱い、金融や通信、製造といった業種の大手企業を中心に「ASM」の導入実績を積み上げてきた。
この3月に発売したWAF運用監視サービスは、同社の専門技術者が24時間365日、ユーザー企業のWAFを運用監視するもの。後藤マネージャーは、「このサービスの提供によって、運用の煩わしさがハードルとなって導入が進まなかったユーザー企業に再度アプローチし、今度こそWAFの導入案件を獲得できるはず。大いに期待している」と抱負を語る。
SCSKは市場開拓に向けて、(1)WAFの運用監視サービスを自社で直接ユーザー企業に提供し、「ASM」製品の販売を拡大する、(2)運用監視サービスをF5ネットワークスジャパンの他販社に販促ツールとして提供し、この売り上げをWAF事業拡大の重要な柱とする──という方策をとる。
F5ネットワークスジャパンの販売代理店には、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)や野村総合研究所(NRI)など、大手システムインテグレータ(SIer)がいて、SCSKは、「年商が数千億円規模のSIerとの連携によって、WAFビジネスを大きく活性化したい」(後藤マネージャー)としている。
WAF市場はまだ比較的小さいマーケットだが、ウェブアプリケーションを狙った脅威が増えており、WAFの今後の需要拡大に期待できそうだ。有力SIerのSCSKが、今回の運用監視サービスをもって、他の有力SIerと組むかたちで、WAFの展開に取り組む。これによって、WAFの本格普及は追い風を受けることとなるだろう。(ゼンフ ミシャ)