ウイングアーク テクノロジーズが2009年6月に設立した中国・上海の現地法人、文雅科信息技術(上海)有限公司(桜井洪明総経理)が順調にビジネスを伸ばしている。昨年度(2012年2月期)は、売上高が前年度の1.5倍に成長。今年度は、昨年度の2倍を見込んでいる。わずか3年で成長軌道に乗せることができた理由は何なのか。この強さには、中国市場の攻略に日本企業ならではの強みを生かすという秘訣があるようだ。
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| 桜井洪明総経理 |
昨年度の売上高が前年度の1.5倍に達した理由について、桜井総経理は「中国では、ERPを導入した次のステップとして、BI(ビジネスインテリジェンス)で効率よく企業内データを分析するというニーズが高まっている。そのニーズを的確に捉えて、ユーザー企業を獲得してきた」と説明する。中国では、とくに小売業界に外資系企業の参入が相次いでおり、競争が激化しているという。粗利率を高めるために、中国企業はデータを細かく分析してコスト削減を図る策を模索している。そうした動きが、ウイングアークの主力BI製品「Dr.Sum EA」の導入に結びついたという。ユーザー企業は「日系企業では数社だが、中国企業は30~40社に達している」と、中国で人気を博している状況がうかがえる。なお、同社のBI製品は小売業だけでなく製造業など、現場のコスト削減を試行錯誤している企業が導入している。
昨年度は大幅成長を遂げたものの、「まだまだ母数は小さい」ことから、今年度は昨年度のさらに2倍の売り上げを目標にしている。「企業が効率化を求めているので、中国企業のIT投資は今年も伸びる」との状況も後押ししている。とくに、今年度は「上海など華東地域が中心だったビジネスの場を全国網に広げて展開する」としている。昨年、持株会社の1stホールディングスが、ERPなどソフト販売の上海達策信息技術有限公司とインテグレーションやコンサルティングを手がける上海敏策信息技術有限公司の株式取得を果たしたほか、BIの開発や販売を手がける北京宇動源科技有限公司(CosmoSource社)と資本提携して合弁会社を設立。さらには、文雅科信息技術(上海)が、神州数碼控股有限公司(デジタル・チャイナ)のグループ企業で銀行を主要顧客とする神州数碼融信軟件有限公司(デジタル・チャイナ・フィナンシャル・ソフトウェア)と「Dr.Sum EA」の販売に関して業務提携した。このような取り組みで、中国全土を網羅する土台を築いたわけだ。
今後は、「これらのパートナー企業に対して、いかに当社の製品や販売の仕方を理解してもらえるかがカギ。手厚い支援で販売パートナーが売りやすい環境を整えていく」としている。文雅科信息技術(上海)では、2015年度に15億円の売上高を狙っている。中国市場の状況を把握しながら、販社に手厚い支援を行う日本流のパートナーシップを深めるという同社の戦略が、競合他社との差異化要素として定着すれば、目標に据える売上高は現実味を帯びてくる。(佐相彰彦)