中山 NTTデータビズインテグラルの中山です。NTTデータイントラマートの社長を兼任しています。もともとは、NTTデータに入社して「Biz∫」の前身であるERPである「SCAW」の開発と営業に従事していました。その後、NTTデータイントラマートの設立に関わり、2009年に立ち上がったNTTデータビズインテグラルの社長に就任しました。
「SCAW」の基盤が老朽化していたので、リニューアルしようというプロジェクトがNTTデータ内で発足したのが発端です。話し合いを重ねるなかで、機能が充実してきたNTTデータイントラマートのSaaS対応のアプリケーション基盤製品「intra-mart」上に、SOA(サービス指向アーキテクチャ)型で「SCAW」のソースコードを載せ替えて開発することにしました。さらには、国産パッケージのノウハウを結集して「Biz∫」のラインアップを充実させていこうと考えて、コンセプトに賛同してもらった東洋ビジネスエンジニアリング、ウイングアークテクノロジーズ、アイテックスと日本を代表するERPをつくろうという心意気で事業を始めました。
製品開発に2年くらいかかったので、販売を開始したのは1年ほど前。昨年の導入実績は50社で、昨年度の売り上げは対前年比で2倍以上の伸び。いいスタートを切ることができました。
導入が容易で経営改革に役立つ
──現状の分析と、クラウドにどのように対応してこられたのかについてお聞かせください。
渡辺 お客様がシステムを入れ替える目的の根底には、業務を改善したいとの思いがあります。富士通の3階層ERPのうち、クラウドで売り出した「きらら」は、小規模企業の経理担当者が迷うことなく、迅速に使いこなせることを念頭に開発しています。インストラクターが3回くらい指導すれば使っていただけるようになります。
クラウドに対する懸念はほとんどありませんね。もともと、現場の担当者はコンピュータがどこで動いているかを知りません。サーバーという存在の認識がないまま、オフィス内に設置してきました。小規模であればあるほど、やりたいことをできればいいという意識が強い。
大企業と中堅企業に対しては、先ほど申し上げたように、お客様の情報システム子会社がサービスとして提供するERP、お客様とSEが一体になってつくっていくプライベートクラウドなど、階層に分けて提供してきました。
田村 ネットスイートは、経営をドライブするために必要な情報系アプリケーションやビジネスインテリジェンス(BI)を実装するクラウドERPを提供しています。
従来のオンプレミス型では、サーバーを導入しなければなりません。グループ企業がサーバーを導入した瞬間に、本社からのコントロールが利かなくなります。しかし、クラウドであれば、本社が手綱を握った状態で一元管理できます。
「NetSuite」の採用先は、大きく分けて二つあります。一つは、ビジネスを迅速に立ち上げたいという企業。買収した企業やビジネスユニットに、「NetSuite」を展開することがあります。もう一つは、グループ企業を多数抱える巨大企業です。
本社でSAPやオラクルなどの巨大なERPが動いている場合、グループ企業に同じERPを展開するのはROI(投資回収率)を考えると得策ではありません。リーマン・ショック以降、この問題の解決策がないように考えられてIT投資が凍結されていました。当時もネットスイートは存在したのですが(笑)。ここ1~2年でクラウドERPの認知度が高まって、グループ企業向けに展開する引き合いが増えています。
末兼 最近は、企業内システムをまるまる入れ替えるのははやりません。試したけれど、現場の抵抗にあって、結局は個別システムが乱立しているという状況がよくみられます。だとすれば、どのようにERPの導入を提案すればいいのか。
海外のグループ企業や関係企業、買収した企業の場合、すでに既存システムが稼働している場合が少なくありません。ですが、中国にはジョイントベンチャーが多く、新規システムを迅速に立ち上げたいという需要があります。システムのセットアップやインストールに時間がかかるのは論外です。オラクルは、短期導入の業務テンプレートをしっかり揃えています。
本社がかなりのカネと苦労をかけてEBSを導入したものの、それを海外拠点にそのままもっていくことができない。ですから、JDEをコンパクトなビジネスプロセスに標準化して展開することが結構あるんですよ。JDEの納入で実績をもつパートナー企業は、プライベートクラウドの環境でサービスを提供していて、手応えを感じています。
パブリッククラウドのビジネスについては、創業者のラリー・エリソンが個人的に早くから投資してきたにもかかわらず、オラクルはなかなか取り組まなかった。ようやく潮目が変わってきた、とオラクルでは認識しています。
2011年の秋には、パブリッククラウドを開始すると宣言し、すでにCRMと人材管理を提供し始めました。ERPのコアアプリケーションはまだ未提供ですが、マーケットの要求を見極めながら手を打っていく方針です。
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Java EEに対応した『Fusion Middleware』上で稼働させている『Fusion Applications』を通じて、BIやSOA/BPMなどと組み合わせた新たなビジネスバリューを提供します 日本オラクル 末兼達彦氏 |
山田 これまでと明らかに違うのが、“持たざるIT”という考え方です。富士通の渡辺さんが指摘されたように、ハードウェアに興味がない、IT資産をもちたくないというお客様が増えています。そうした動きにつれて、「SuperStream-NX SaaS対応版」の需要が非常に高まっていると感じます。
最近顕著に感じるのが、グローバル利用とシングルインスタンスでの利用です。国内は「SuperStream」で、海外は違うシステムということがあまり許されないようになってきました。なので、遅まきながら英語や多通貨に対応してきました。
衝撃を受けたのは、本社と現地法人が月次報告をExcelで共有して、月の半分くらいを本社からの問い合わせ対応に費やすという企業が実際にあると知ったとき。共通のインフラ基盤であれば、こうした作業は必要ありません。クラウドならではの強みを発揮できます。
売り方についていえば、スーパーストリームは100%間接販売です。富士通をはじめとする17社のパートナー企業のデータセンターに「SuperStream」をインストールして、それぞれが独自価格かつマルチテナント形式で、サービスを提供しています。
クラウド対応を進めるなかで、柔軟なインターフェースをもつRIA(リッチインターネットアプリケーション)を採用して、使いやすさを追求してきました。
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