クラウドERPだけで勝負はしない
──2012年度は、どのような戦略でクラウドERP事業の成長を目指しますか。
中山 2012年度は、販売面でいえば実績を出していく段階に突入します。そのためにも、グループ全体で「Biz∫」を利用する際の運用管理や使い勝手について、お客様から寄せられる要望に応えられるように体制を強化して、より完成されたクラウドERPを目指します。
すでに、さまざまな製品と連携していて、仲間が増えています。最近はインフォテリアのEAIツールである「ASTERIA」をOEM(相手先ブランドによる供給)で提供しています。生産管理は、東洋ビジネスエンジニアリングと話を進めていますが、品揃えが追いついていない状況です。今後は、さらに幅広い業種・業態に対応する製品を追加しようと準備しているところです。
クラウドERPの展開を通じて感じたのは、ERPが完全にコモディティ化しているということです。とくに、財務会計に関してはお客様にあまり価値を感じてもらえず、ベンダー同士の値段の叩き合いが激しい。
こんな泥沼状態で事業を展開してもおもしろくありませんから、先ほど申し上げたように、単なるコスト削減とは一線を画します。
 |
最初からマルチテナント形式で利用できる本物のクラウドERPとなっています。個別のビジネスロジックレベルにまでカスタマイズした環境を提供できるのが大きな特徴です NTTデータビズインテグラル 中山義人氏 |
山田 2011年は、「SuperStream-NX SaaS対応版」が本格的に立ち上がり、50社くらいに提供しました。2012年は、オンプレミスをきちんと手がけつつ、クラウドもしっかりやりたい。
間接販売ですから、パートナー企業との関係をより強固にしていきます。また、財務会計、人事給与の専業ベンダーとして、一般会計、管理会計、支払い、債権以外にも、日本独特の固定資産やリース資産の管理などもリリースしましたので、国産ならではの強みをアピールしていきます。固定資産の管理については、いまだシステム化していない企業が多い。資産の件数が200件、300件の程度だからMicrosoft Excelで管理しているという企業を、気軽に利用できるクラウドで救えると思っています。
加えて、グローバル版を発表しましたので、アジアを中心に日系企業の現地法人に向けて、シングルインスタンスの「SuperStream」をパートナーと提案していきたい。
末兼 クラウドの要求は拡大していますから、引き続きパートナー企業が用意するJDEのプライベートクラウドを提供していきます。加えて、Java EEに対応した「Fusion Middleware」上で稼働させている「Fusion Applications」を通じて、BIやSOA/BPMなどと組み合わせた新たなビジネスバリューを提供します。
「Peoplesoft」には、「PeopleTools」という開発支援ツールがあります。非常に生産性が高く、例えばトヨタ自動車はかなり使い込んでいます。ですが、残念ながら「PeopleTools」の独自コードを書ける人しか使えません。一方で「Fusion Applications」は、「PeopleTools」に似たアーキテクチャを継承しながらも、100%ネイティブJavaなので、Javaのコードさえわかればいいというメリットがあります。
ERPの主導権は、現場に戻ってきています。これから20年先のユーザーは、中学生や高校生の頃からTwitterに慣れ親しんでいる人たちで、旧態依然としたERPのユーザーインターフェースではやる気が起こらないという時代が到来するでしょう。ユーザーエクスペリエンス(体験)を変えていかなければなりません。こうした動きをにらんだ事業展開をしていきたい。
田村 グループ企業や海外拠点に「NetSuite」を展開するケースが非常に多いので、より迅速に、より安く提供できるように経験値を高めます。最近は、2か国同時展開だけでなく、5か国くらいまとめて展開するケースが増えていますので、柔軟に対応できるようにしていきたい。
渡辺 財務会計、人事給与を揃えている「きらら」がカバーする業務領域を広げていきます。500社くらいのパートナー企業が持つ独自サービスと組みあせて提供します。年商10億円規模の企業には、業務とITの両面からサポートしていきたい。
中堅企業向けの「GLOVIA Smart」は、エンジニアのサービスにITアウトソーシング(ITO)、ビジネスプロセスオペレーション(BPO)と合わせて提供します。
1億件の会計明細を扱う規模の大手企業向けには、財務会計、生産管理などとSIを組み合わせてプライベートクラウドで提供できる領域を増やし、業務を高度化します。エンジニアが個別にパッケージして提供してきたミドルウェアは、クラウドの運用に合致したかたちでプリセットする考えです。
[次のページ]