日本IBM(マーティン・イェッター社長)が、x86サーバー「IBM System x」の販売事業で、中堅・中小企業(SMB)市場を深耕している。これまで手薄だった低価格機種を5月中旬に発売して、品揃えを増強。SMBからの要望が増えてきた、システムと端末の仮想化にマッチするソリューションを、ダイワボウ情報システム(DIS、野上義博社長)と組んで企画・メニュー化し、販社が売りやすい仕組みを整えた。「仮想化でSMBにサーバーを売る」という王道の戦略を、着々と展開している。
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小林泰子 理事 システムx事業部長 |
インテルが新プロセッサを発表した5月15日、日本IBMは新たなx86サーバーを発表した。SMBに適した低価格な新機種を、ブレード型とラック型、タワー型でそれぞれラインアップ。品揃えが乏しかったカテゴリを、今回発表した合計7機種で埋めた。これらの新サーバーをユーザー企業に提案するための材料が、仮想化だ。システムの仮想化は、決して新しいものではなく、大企業のユーザーではあたりまえ。だが、小林泰子・理事システムx事業部長は「SMBは、今が普及期にある」とみている。「SMBから、情報システムを仮想化したいという要望が昨年から増え、今も増加している。今後もしばらく期待できる」(小林理事)という。ユーザーが所有する複数の古いサーバーを、省電力・高スペックで運用管理機能が豊富な新サーバーに集約するメリットを訴えて、販売台数を伸ばす。
サーバーの仮想化では、すでにいくつかの取り組みを進めてきた。例えば、ヴイエムウェアの仮想化ソフト「VMware ESXi」と「IBM System x」、マニュアルを組み合わせたセット商品「DIS Easy Virtual Package(DIS EVP)」をDISと組んで企画したのがそれだ。DIS傘下の販社が、「DIS EVP」を販売する仕組みが整っている。
これらを継続してPRしながら、今回はデスクトップの仮想化にも取り組む。DISとの協業関係を強めて、共同企画のセット製品を、デスクトップの仮想化ソリューションでもつくった。クラウド基盤「ClassCat Cloud Enterprise Edition」と、DaaS環境を提供する「2X ApplicationServer」および「2X VirtualDesktopServer」、そして「IBM System x」をパッケージ化したデスクトップ仮想化ソリューション「DIS EVP CLOUDIVA」を共同企画し、DISの販路に流している。価格が安いのが特徴で、シトリックス・システムズ・ジャパンの製品を使うよりも、3分の1程度の価格で導入することができるという。デスクトップの仮想化は、「サーバーに次ぐ拡販の武器」(小林理事)に位置づけており、攻勢をかけるつもりだ。
SMBに、仮想化ソリューションを切り口にサーバーを販売しようと動いているのは日本IBMだけではない。とはいえ、大手ディストリビュータのDISと組んでセット商品を企画し、VDIではメジャーな製品ではなく、SMBに適した価格とシンプルな機能に絞ったツールを扱う点はユニークだ。(木村剛士)